【帰化申請・永住許可・高度専門職】徹底比較:日本での永続的かつ安定した法的地位を得るための3つの主要な選択肢について
- 行政書士 日下 雄一朗
- 6月18日
- 読了時間: 9分

日本でご活躍中の外国人の方々にとって、より安定した法的地位と自由な活動範囲を確保することは、日本での長期的な生活設計やキャリア形成において極めて重要なテーマです。その手法として、「帰化」による日本国籍の取得、「永住許可」による永住権の確立、そして「高度専門職2号」という無期限の在留資格への移行が考えられるのではないでしょうか。
本記事では、「帰化」「永住許可」、そして「高度専門職2号」という、日本での永続的かつ安定した法的地位を得るための三つの主要な選択肢について、それぞれの制度概要、特徴、要件、手続きを比較・解説いたします。皆様がご自身の状況や将来の展望に最も合致した道を選び取るための一助となれば幸いです。
目次
1.「帰化」「永住許可」「高度専門職2号」 それぞれの制度概要について
まずは前提となる、これらの制度がもたらす法的な地位と、その概要ついて確認していきましょう。
帰化(日本国籍取得) :
「帰化」とは、申請者の現在の国籍を離脱(または事情により喪失)し、新たに日本の国籍を取得することで、法的に日本人としての地位を得る手続きです。これにより日本人と全く同じ権利を有し、義務を負うことになります。審査は法務局が担当し、許可されると日本の戸籍に記載されます。
永住許可(在留資格「永住者」):
「永住許可」とは、法務大臣が行う許可の一種で、この許可を受けることで、当該外国人は在留資格「永住者」を得ます。 永住者の資格は、外国籍を保持したまま日本に永続的に居住することを認めるもので、在留期間の制約がなくなり、また就労活動に関する制限もなくなります。
高度専門職2号(在留資格「高度専門職」):
「高度専門職」は、日本の学術研究や経済の発展に貢献すると期待される高度な能力を持つ外国人のための在留資格です。高度専門職2号は、高度専門職1号(イ・ロ・ハのいずれか)で3年以上活動し、素行が善良であるなどの要件を満たした場合に移行が可能となります。この2号の資格は、1号で認められた活動に加えて、関連するほぼ全ての就労活動を行うことが可能となり、在留期間も無期限となります。
これらの基本的な違いを念頭に置き、さらに具体的な比較を進めてまいります。
2.比較①:それぞれの制度の特徴について
帰化、永住許可、そして高度専門職2号では、日本での生活における権利、義務、そしてその影響範囲が大きく異なります。
比較項目 | 帰化 (日本国籍取得) | 永住許可 (永住者) | 高度専門職2号 |
国籍 | 日本国籍を取得(原則として元の国籍は喪失) | 外国籍のまま | 外国籍のまま |
参政権 | あり | なし | なし |
戸籍 | 日本の戸籍が作成される | 作成されない | 作成されない |
母国の権利 | 原則として喪失 | 原則として維持 | 原則として維持 |
就労制限 | 制限なし | 制限なし | 「高度専門職1号」の活動に加え、関連する就労活動のみ可能 |
在留期間 | 無期限 | 無期限(在留カードの有効期間更新は必要) | 無期限(在留カードの有効期間更新は必要) |
転職・起業 | 自由 | 自由 | 高度専門職の活動を基礎とする範囲のみ可能 |
親の帯同 | 原則不可 | 原則不可 | 特定の条件下で可能 |
退去強制 | 対象とならない | 対象となりうる | 対象となりうる |
解説:
国籍と関連する権利・義務:
帰化すれば日本国籍となり、参政権や日本のパスポート取得など、日本人固有の権利を得ます。 永住許可や高度専門職2号は外国籍のままですので、これらの権利はありません。
在留活動と期間の安定性:
永住許可と高度専門職2号は、ともに在留期間が無期限となります(在留カードの更新は必要)。 就労活動については、永住許可は原則自由なのに対して、高度専門職の活動を基礎とする範囲のみに限定されます。なお帰化に関しては、法律上日本人と同等に扱われるため、在留期間はもちろん、就労活動についても一切の制約がありません。
親の帯同について:
現在の日本の制度において、在留外国人の方が親族を日本に招いて一緒に生活する手法は非常に限定的です。これは帰化者や永住者においても例外ではなく、原則として親の帯同は認められません。これに対して高度専門職については一定の条件下ではあるものの、両親を日本に招いて生活するための制度(在留資格「特定活動(告示34号)」)が設けられています。
退去強制のリスク:
永住許可や高度専門職2号については、いずれも重大な法令違反を犯した場合は退去強制の対象となる可能性があります。 これに対して帰化者については、この対象になりません。
3.比較②:許可要件(審査基準)の違いについて
帰化、永住許可、そして高度専門職2号では、許可要件(審査基準)と審査項目についてもそれぞれ差異があります。
主な要件 | 帰化 (日本国籍取得) | 永住許可 (永住者) | 高度専門職2号 |
居住・活動年数 (居住要件等) | 日本に5年以上在留 | 日本に10年以上在留 | 高度専門職1号の在留資格で3年以上活動 |
年齢 (能力要件) | 原則18歳以上 | なし | 39歳未満の場合、年齢に応じて一部加算 |
収入 (生計要件) | 年収300万円程度 | 年収300万円程度 | 年収3,000万~400万円でポイント加算(300万円以下で一部足切りあり) |
日本語能力 | 小学校中学年程度(日本語能力試験N3程度) | なし | 日本語能力試験N2相当以上でポイント加算 |
※上記の要件は比較の便宜上、簡略化した一般的・原則的なものとなっております。
解説:
居住・活動年数:
帰化は原則5年、永住許可は原則10年の日本在留が必要です。 高度専門職2号へは、高度専門職1号として3年以上の活動実績が基本となります。
年齢:
帰化は申請者が18歳以上であり、かつ、本国の法律によっても成人の年齢に達していることを原則の要件としますが、永住許可にはこのような要件がなく、未成年であっても申請が可能です。高度専門職では年齢はポイントの加算要件となっており、39歳未満であれば加算の対象となります。
収入:
帰化・永住ともに具体的な金額は明示されていないものの、一般に300万円以上の年収が必要となるといわれています。これに対して高度専門職は年収3,000万〜400万円のレンジでポイント加算の対象となっており、300万円未満の場合には他の加算状況に関わらず足切りとなります。
日本語能力:
帰化については小学校中学年程度(日本語能力試験N3程度)が求められますが、永住許可ではこのような要件がありません(日本語能力が高い方が有利ではあります)。また高度専門職では日本語能力試験N2相当以上がポイント加算の対象となります。
4.比較③:審査期間等の違いについて
申請窓口、必要書類、審査にかかる期間もそれぞれ異なります。
比較項目 | 帰化(日本国籍取得) | 永住許可(永住者) | 高度専門職2号 |
申請窓口 | 住所地を管轄する法務局 | 住居地を管轄する出入国在留管理局 | 住居地を管轄する出入国在留管理局 |
主な必要書類 | 帰化許可申請書、身分関係・国籍証明書類、履歴書、生計・納税証明書類、日本語能力に関する資料、動機書など、非常に多岐にわたる。 | 永住許可申請書、理由書、身分関係証明書類、職業・収入・納税証明書類、公的年金・医療保険の納付証明書類、身元保証に関する書類 など。 | 在留資格変更許可申請書、高度専門職1号としての活動実績を証明する資料、収入・納税証明書類、素行に関する資料など。 |
審査期間目安 | 一般的に8ヶ月~1年半程度。事案によりこれ以上かかる場合も。 | 一般的に6ヶ月〜1年程度。事案によりこれ以上かかる場合も。 | 1〜3ヵ月程度。 |
解説:
申請先:
帰化は法務局 、永住許可と高度専門職2号は出入国在留管理局が申請窓口となります。
書類準備:
帰化申請は、収集・作成すべき書類が最も多く、準備に長期間を要する傾向があります。永住許可や高度専門職につきましても詳細な資料が求められるものの、帰化と比べると比較的少なめです。
審査期間:
帰化と永住許可につきましては、審査期間が非常に長く、審査に1年以上かかるケースも珍しくありません。これに対して高度専門職2号への変更申請は、永住許可や帰化に比べてかなり審査期間が短い傾向にあります。
5.選択の際に考慮しておきたい要素について
これら三つの選択肢の中からどれを選ぶべきかは、個々人の価値観、キャリアプラン、ライフステージ、そして日本社会との関わり方に対する考え方によって異なります。
●選択の際に考慮しておきたい要素
国籍に対する考え方:
国籍に対するこだわりがない場合、法律上日本人と同等の取扱いとなる帰化は日本での長期的な生活設計を行う上で非常に有力な選択肢となりえます。
これに対して母国の国籍を維持しつつ、日本での永続的かつ安定した生活基盤を確立したいと考える場合、永住許可または高度専門職2号を検討する必要がありま
す。
いつまでに無期限の資格を得たいか:
比較的早期に無期限の安定した在留資格を得たい場合、高度専門職2号(または高度専門職1号からの永住許可申請)が候補に挙がります。
高度専門職の活用が難しい場合、永住と比較して半分の在留期間で申請することが可能となる帰化が候補に挙がります。
家族との将来計画:
家族全員で無期限の資格を取得したい場合、帰化申請あるいは永住許可が候補となります(両親または配偶者が申請する場合に、簡易帰化や永住者の配偶者等の資格を活用(経由)することで、住居要件等の一部要件緩和が可能)。
親の帯同を希望される場合、高度専門職2号を検討する必要があります。
キャリアプラン:
専門性に関わらず、日本で自由に職業選択や起業をしたい場合、帰化または永住許可を検討する必要があります。
いずれについてもメリット・デメリットが存在するため、どの手続きを行うべきかは一概に判断することはできず、個人の価値観や将来設計によって選択するべきだといえます。例えば、専門分野でのキャリアを追求しつつ早期に安定した無期限の在留資格を得たいのであれば高度専門職2号、母国籍を維持しつつより広範な活動の自由度と永続的な居住権を求めるなら永住許可、国籍にこだわりがなく、日本国民としての権利と義務を全て受け入れてもいいのであれば帰化、という方向性が考えられます。
6.まとめ
本記事では、「帰化」「永住許可」、そして「高度専門職2号」という、日本での永続的かつ安定した法的地位を得るための三つの主要な選択肢について、それぞれの特徴、要件、手続きを比較・解説いたしました。これらの制度は、日本で生活し、キャリアを築く外国人の方々にとって、将来を左右する重要な決断に関わるものです。
各制度はそれぞれに複雑な要件が定められており、また、法改正や運用状況によって取り扱いが変更される可能性もございます。ご自身の学歴、職歴、収入、家族構成、日本での在留状況などを正確に把握し、最新の情報に基づいて最適な選択を行うことが不可欠です。
長後行政書士事務所では、相談者様一人ひとりの状況を丁寧に把握し、最適なアドバイスとサポートを提供することで、それぞれの目標達成に向けて全力でお手伝いさせて頂いております。
初回相談無料となっておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
参考:
出入国在留管理庁「永住許可申請」:
出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン」 :
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan50.html
出入国在留管理庁「高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度について」:
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/newimmiact_3_index.html
法務省「国籍Q&A」:
出入国在留管理庁「在留資格 高度専門職 」:
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities02_00004.html
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