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【永住許可申請】永住権とは?その概要、メリット、要件、申請方法を網羅的に解説

  • 執筆者の写真: 行政書士 日下 雄一朗
    行政書士 日下 雄一朗
  • 6月10日
  • 読了時間: 15分

更新日:6月15日


講義を受講している人々

日本で生活する多くの外国人の方々にとって、「永住権」の取得は、日本での生活をより安定させ、将来設計を立てやすくするための重要なステップです。特に、就労系の在留資格で長年日本に貢献されてきた方々にとっては、活動内容や在留期間の更新といった制約から解放される永住権は、魅力的な選択肢と言えるでしょう。


本記事では、行政書士の専門的な立場から、「永住権とは何か」という基本的な知識から、その取得メリット、他の在留資格や帰化との違い、具体的な許可要件、申請手続き、そして申請にあたっての注意点まで、網羅的に解説させて頂きます。


目次

  1. 永住権とは – その定義と法的側面

  2. 永住権を取得する多岐にわたるメリット

  3. 永住権と他の主要な在留資格・制度との比較

  4. 永住許可を得るための主要な審査基準

  5. 永住許可申請の標準的な手続きと流れ

  6. まとめ


1. 永住権とは – その定義と法的側面


「永住権」と「永住者」、「永住許可」

「永住者」とは、法務大臣が永住を認める者に対して付与される在留資格です。この資格を取得すると、在留期間の更新が不要となり、活動内容にも原則として制限がなくなります。つまり、就労や事業経営など、日本国内で適法な範囲内であれば、日本人と同様に自由な活動が認められます(ただし、退去強制事由に該当した場合には、永住者であっても日本から退去を強制される可能性があります)。

ちなみに「永住権」と「永住者」、「永住許可」という言葉はしばしば混同して使われがちですが、定義としては以下の通りとなります。

用語

説明

永住権

一般的に使われる言葉で、日本に永続的に居住する権利の俗称。用法的には、在留資格「永住者」またはそれを取得するための行政処分である「永住許可」を指すことが多い。

永住者

出入国管理及び難民認定法に基づく在留資格の一つ。法務大臣から永住許可を受けた外国人が持つ資格。在留期間の制限がなく、原則として日本に永住できる。

永住許可

法務大臣が行う許可の一種。この許可を受けることで、当該外国人は在留資格「永住者」を得る。他の多くの在留資格とは異なり、在留期間の更新が原則として不要となる。



2. 永住権を取得する多岐にわたるメリット

永住権(永住許可)を取得することには、日本での生活をより豊かで安定したものにするための多くのメリットが存在します。ここでは、主なメリットを具体的に解説します。


在留活動・在留期間に関する制約からの解放

前述の通り、永住権を取得する最大のメリットの一つは、在留活動の制限がなくなることです。


  • 職業選択の自由: 

    法律の範囲内であれば、どのような仕事にも就くことができます。転職や起業も自由に行えるため、キャリアパスの選択肢が大きく広がります。例えば、現在の就労ビザでは認められていない分野の仕事に挑戦したり、自ら会社を設立して事業を運営したりすることも可能となります。


  • 在留期間更新の不要: 

    在留期間の更新手続きという精神的・時間的負担から解放されます。数年ごとに更新申請の準備をし、審査結果を待つというプロセスがなくなること

    は、長期的な生活設計において大きな安心感につながります。


社会的信用の向上と生活基盤の安定

永住権を持つことは、日本社会における信用度を高める効果があります。


  • 住宅ローンの利用: 

    金融機関によっては、永住権を持っていることを住宅ローン審査の有利な条件としている場合があります。マイホームの購入など、より安定した生活基盤を築きやすくなります。


  • 事業資金の融資:

     起業や事業拡大の際に、金融機関からの融資を受けやすくなる傾向があります。これは、永住者としての在留の安定性が評価されるためです。


家族に関する優遇措置

永住者の配偶者や子供は、一定の要件を満たせば、他の在留資格からの変更や新規取得において、永住許可申請や「定住者」などの身分系在留資格の取得が比較的有利に進められます。


  • 配偶者や子の永住許可: 

    永住者の配偶者や実子は、通常の永住許可要件(例えば10年の在留期間)が緩和される特例があります。


これらのメリットを総合的に考えると、永住権の取得は、日本での生活の自由度、安定性、そして将来の選択肢を大きく広げるものと言えるでしょう。



3. 永住権と他の主要な在留資格・制度との比較

永住権(永住許可)の特徴をより深く理解するために、他の主要な在留資格や日本国籍を取得する「帰化」との違いについて比較検討します。


就労系在留資格との比較

現在、多くの方が「技術・人文知識・国際業務」などの就労系在留資格で日本に在留されているかと存じます。これらの在留資格と永住権の主な違いは以下の通りです。

比較項目

就労系在留資格

永住権(永住者)

在留活動

許可された範囲内の活動のみ(例:専門職業務)

原則として制限なし(公序良俗に反しない限り自由)

在留期間

年、3年、5年など期限あり

無期限

期間更新

必要(不許可のリスクあり)

不要(在留カードの有効期間更新は7年ごとに必要)

転職・起業

制限あり(原則、同種の業務範囲内。要届出・許可)

自由

社会的信用

永住者に比べると相対的に低くみられる場合がある

高い

家族の呼び寄せ

配偶者・子など可能だが、永住者の方が有利な場合あり

配偶者・子など、より有利な条件で可能な場合あり

就労系在留資格は、特定の専門性や技能を活かして日本で働くための資格であり、活動内容や期間に一定の制約があります。一方、永住権はこれらの制約から解放され、より自由で安定した日本での生活が可能となります。


「定住者」資格との比較

「定住者」は、法務大臣が特別な理由を考慮して居住を認める身分系の在留資格です。日系人の方や、一定の条件を満たす外国人の方に付与されることがあります。「定住者」も就労活動に制限はありませんが、永住権とは以下の点で異なります。

比較項目

定住者

永住権(永住者)

在留期間

6ヵ月、1年、2年、5年など期限あり

無期限

期間更新

必要(不許可のリスクあり)

不要(在留カードの有効期間更新は7年ごとに必要)

取得要件

法務大臣が個々の事情を考慮して決定(告示定住など)

入管法に定める永住許可要件を満たす必要あり

安定性

永住者に比べると相対的に低くみられる場合がある

高い

「定住者」も就労制限がない点で永住者と共通しますが、在留期間の定めがあり更新が必要な点が大きな違いです。永住権は、より恒久的な在留を保障するものと言えます。


「帰化」との比較 – 日本国籍取得との違い

「帰化」とは、外国人が日本の国籍を取得し、日本人になることを意味します。永住権は外国籍のまま日本に永住する権利であるのに対し、帰化は国籍そのものが変わるという点で根本的に異なります。

比較項目

永住権(永住者)

帰化(日本国籍取得)

国籍

外国籍のまま

日本国籍を取得(原則として元の国籍は喪失)

参政権

なし

あり(選挙権・被選挙権)

日本のパスポート

発給されない

発給される

戸籍

作成されない

日本の戸籍が作成される

母国の権利

原則として維持される

母国の国籍法により喪失する場合が多い

退去強制

対象となる可能性あり

対象とならない

審査機関

出入国在留管理庁

法務局

許可基準

入管法に基づく永住許可要件

国籍法に基づく帰化要件

永住権は、母国の国籍を維持したまま日本での安定した生活を望む場合に適しています。一方、帰化は、日本人としての権利・義務を全面的に受け入れ、日本社会の構成員として生きていくことを選択するものです。双方にメリット・デメリットが存在するため、どちらの手続きを行うべきかは一概に判断することはできず、個人の価値観や将来設計によって選択するべきといえます。



4. 永住許可を得るための主要な審査基準

永住許可を得るためには、入管法第22条の定めに従い、以下の要件を満たす必要があります。


  • 素行が善良であること

  • 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること

  • その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

(出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン」より引用)


これらの要件について、詳しく解説していきます。


 素行が善良であること

これは、申請者が日本の法律を遵守し、社会的に非難されることのない生活を送っているかの確認がされています。具体的には、以下の点が審査されます。


  • 法律違反の有無: 

    懲役、禁錮、罰金などの刑罰を受けていないこと。交通違反も、軽微なものであっても頻繁に繰り返している場合は問題視されることがあります。


  • 納税義務の履行: 

    所得税、住民税、年金、健康保険料などの公租公課をきちんと納めていること。未納や滞納がある場合は、永住許可は極めて困難となります。現在の滞納だけでなく、過去の滞納についても確認がなされるので注意が必要です。


  • 入管法上の義務の履行:

     在留カードの携帯・提示義務、住居地の届出、所属機関等に関する届出など、入管法で定められた届出義務を適正に履行していること。


  • 日常生活における素行:

     公序良俗に反する行為や、社会的に問題視されるような行動がないこと。


独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること

これは、申請者が公共の負担にならず、安定した生活を継続できるだけの経済的基盤を持っていることを意味します。世帯単位で判断されます。


  • 安定した収入: 

    継続的に安定した収入があることが重要です。過去数年間の収入状況(課税証明書や納税証明書で確認)が審査されます。明確な年収基準は公表されていませんが、一般的には年収300万円程度が一つの目安とされていますが、扶養家族の人数などによって必要な収入額は変動します。


  • 資産状況: 

    預貯金、不動産などの資産も考慮される場合がありますが、収入の安定性がより重視される傾向にあります。


  • 公的扶助の受給状況:

     生活保護など、公的扶助を受けていないこと。


その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

申請者の永住が、日本の社会・経済にとって利益になると認められることが必要です。この要件は多角的に判断され、以下の要素が含まれます。


 ●原則10年以上の継続在留(特例あり)

原則として、引き続き10年以上日本に在留していることが必要です。この「引き続き」とは、在留資格が途切れることなく継続していることを意味し、一時帰国のような場合であっても、日数によっては要件から外れてしまう可能性があります。また、この10年間のうち、直近の5年以上は就労系の在留資格(「技能実習」及び「特定技能1号」を除く)または居住資格(「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」)で在留している必要があります。

ただし、この10年在留には下記を含むいくつかの特例があります。


  • 日本人、永住者、特別永住者の配偶者の場合:

     実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留していれば、10年在留していなくても申請が可能です。その実子等の場合は1年以上の日本在留で足ります。


  • 「定住者」の在留資格を有する者の場合:

    「定住者」として5年以上継続して日本に在留していれば申請可能です。


  • 難民認定を受けた者の場合:

     認定後5年以上継続して日本に在留していれば申請可能です。


  • 「高度専門職」のポイント計算で一定以上のポイントがある場合:

    • 70点以上の場合: 3年以上の継続在留

    • 80点以上の場合: 1年以上の継続在留 で申請が可能です。


  • 地域再生計画等で貢献があると認められる場合: 

    外国人起業活動促進事業や特定地域再生事業雇用開発助成金の対象地域等で、日本の経済・社会に貢献があると認められる場合は、在留期間が短縮されることがあります。


●罰金刑・懲役刑の有無と公的義務の履行

素行善良要件とも関連しますが、国益適合の観点からも、罰金刑や懲役刑などを受けていないことが求められます。また、納税、年金・医療保険料の納付、入管法上の届出などの公的義務を適正に履行していることが極めて重要です。特に、直近の年金・医療保険料の納付状況は厳しく審査されます。


●現有資格の最長在留期間の保有

現在有している在留資格について、最長の在留期間(多くの場合は「5年」)をもって在留していることが求められます。これは、申請者が安定して日本に在留していることを示す一つの指標となります。ただし、当面「3年」の在留期間を有していれば、最長の在留期間をもって在留しているものとして取り扱われる運用となっています。


●公衆衛生上の配慮

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に定める一類感染症、二類感染症若しくは指定感染症(入院措置が取られるものに限る。)の患者又は新感染症の所見がある者でないなど、公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないことが求められます。

これらの要件は相互に関連しており、総合的に審査されます。



5. 永住許可申請の標準的な手続きと流れ

永住許可申請は、ご自身の状況を正確に把握し、適切な書類を準備して行う必要があります。ここでは、一般的な申請手続きの流れについて解説します。


事前準備と必要書類の確認

まず、ご自身が永住許可の要件を満たしているかを確認します。出入国在留管理庁のウェブサイトで公開されている「永住許可に関するガイドライン」や提出書類一覧表を参照し、不明な点があれば専門家(行政書士)に相談しましょう。

必要書類は、申請者の現在の在留資格や家族構成、職業などによって異なりますが、一般的に以下のようなものが必要となります。


  • 申請書: 

    永住許可申請書


  • 写真:

     規定サイズの顔写真


  • 理由書: 永住を希望する理由を具体的に記述したもの(様式自由ですが、ポイントをまとめることが重要)


  • 身分関係を証明する書類:

    • 申請人本人のもの: パスポート、在留カードの写し、住民票(世帯全員分)

    • 日本人の配偶者、永住者の配偶者等の場合: 戸籍謄本、婚姻証明書など


  • 職業・収入に関する書類:

    • 会社員の場合: 在職証明書、直近の課税証明書・納税証明書(過去数年分)

    • 会社経営者の場合: 会社の登記事項証明書、決算報告書の写し、直近の課税証明書・納税証明書(個人及び法人)

    • 個人事業主の場合: 確定申告書の控えの写し、納税証明書、営業許可証の写し(必要な場合)


  • 資産に関する書類(任意): 

    預貯金通帳の写し、不動産の登記事項証明書など


  • 公的年金及び公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料: 

    ねんきん定期便、年金手帳または基礎年金番号通知書の写し、健康保険被保険者証の写し、国民年金保険料領収証書の写し、国民健康保険料(税)納付証明書及び領収証書の写しなど、直近2年程度の納付状況がわかるもの。


  • 身元保証人に関する書類: 

    身元保証書、身元保証人の職業証明書、所得証明書、住民票


  • その他:

     状況に応じて、貢献に関する資料(表彰状、感謝状、推薦状など)や日本語能力を証明する資料など。


申請書類の提出と受付

準備した申請書類一式を、申請者の住居地を管轄する地方出入国在留管理局に提出します。申請は原則として申請人本人が行う必要がありますが、行政書士などの代理人が申請取次を行うことも可能です。

窓口で書類が受理されると、申請受付票が交付されます。


審査期間の目安と留意点

永住許可の標準的な審査期間は、法務省のウェブサイトでは「4か月〜6か月」とされていますが、これはあくまで目安であり、個々の事案や申請時期、地方入管局の混雑状況によって大きく変動します。場合によっては1年以上かかるケースも少なくありません。

審査期間中は、以下の点に留意が必要です。


  • 在留期限の管理: 

    永住許可申請中に現在の在留資格の期限が到来する場合は、別途、在留期間更新許可申請を行う必要があります。これを怠るとオーバーステイになるため、十分注意してください。


  • 状況変更の届出: 

    転職、転居、結婚、離婚、出産など、申請内容に変更が生じた場合は、速やかに入国管理局に届け出る必要があります。


  • 追加書類の提出指示: 

    審査の過程で、入国管理局から追加の書類提出や説明を求められることがあります。この場合は、指示に従い迅速に対応することが重要です。


結果の通知と受領

審査が完了すると、入国管理局から結果が通知されます。


  • 許可の場合: 

    通知書と手数料納付書(10,000円分の収入印紙が必要)を持参し、入国管理局で新しい在留カード(「永住者」と記載されたもの)の交付を受けます。


  • 不許可の場合:

     不許可通知書が送られてきます。不許可理由については、入国管理局の窓口で確認することができます(通常1回のみ)。理由を詳細に分析し、再申請の可能性や他の選択肢を検討することになります。

  なお、永住許可申請における許可率は2025年2月現在で65%前後となっておりま

  す。



6. まとめ

本記事では、永住権(永住許可)の概要、メリット、要件、申請手続き、注意点などについて、網羅的に解説してまいりました。永住権の取得は、日本での生活基盤を確固たるものにし、将来の可能性を大きく広げる重要な一歩です。

しかしながら、その申請は決して容易なものではなく、正確な知識と周到な準備が求められます。ご自身の状況を客観的に把握し、一つ一つの要件を丁寧に確認しながら手続きを進めることが肝要です。


もし、永住許可申請に関してご不明な点やご不安な点がございましたら、どうぞお気軽に当事務所、長後行政書士事務所にご相談ください。

長後行政書士事務所では、永住許可申請に関する豊富な経験と実績に基づき、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適なサポートを提供しております。初回相談無料となっておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。



参考:

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