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【高度専門職】高度人材とは? その概要、メリット、要件、申請方法を網羅的に解説

  • 執筆者の写真: 行政書士 日下 雄一朗
    行政書士 日下 雄一朗
  • 6月18日
  • 読了時間: 13分
高度人材イメージ

日本が持続的な経済成長を遂げるためには、国内外の優れた人材の力が不可欠です。特に、専門的な知識や技術を有する「高度人材」と呼ばれる外国人材の受け入れは、イノベーションの創出や産業の国際競争力強化に大きく貢献するものと期待されています。


本記事では、日本で就労し、さらなるキャリアアップや安定した在留を目指す外国人の方々に向けて、在留資格「高度専門職」の制度概要、メリット、そして申請における重要なポイントについて、網羅的に解説させて頂きます。


目次

  1.  高度人材(在留資格 高度専門職)とは?

  2. 高度専門職の活動類型:3つのカテゴリー詳解

  3. 高度人材ポイント制について

  4. 高度専門職ビザで得られる7つの優遇措置

  5. 高度専門職2号について

  6. 高度専門職ビザ申請の基本的な流れと必要書類

  7. まとめ


1.高度人材(在留資格 高度専門職)とは?

高度人材(以下、高度専門職という)とは、日本の学術研究または経済・産業分野において、特に高度な能力を持つと認められる外国人材に対して付与される在留資格のことです。この資格は、一般的な就労ビザとは異なり、高度人材ポイント制を用いた特殊な許可基準が設けられている他、様々な優遇措置が設けられている点が大きな特徴となっています。


制度の目的と背景

高度専門職制度は、2012年5月に「高度人材に対するポイント制による出入国管理上の優遇制度」として導入(当時は特定活動の一種でした)され、2015年4月には在留資格「高度専門職」が創設されました。この制度の主な目的は、以下の通りです。

  • 日本の学術研究及び経済の発展への寄与: 

    高度な専門知識や技術を持つ外国人材を積極的に受け入れることで、国内の研究開発力の向上や新たな産業の創出を促進する。


  • 国際競争力の強化: 

    グローバル化が進む中で、世界各国との人材獲得競争に対応し、日本の魅力を高める。


  • イノベーションの促進: 

    多様なバックグラウンドを持つ人材の交流を通じて、新たなアイデアや技術革新を生み出す環境を醸成する。


少子高齢化が進む日本において、労働力人口の確保という観点からも、高度な能力を持つ外国人材の受け入れは重要な政策課題と位置付けられています。


一般的な就労ビザとの違い

高度専門職ビザは、他の一般的な就労ビザ(例:「技術・人文知識・国際業務」、「経営・管理」など)と比較して、以下のような顕著な違いがあります。

項目

内容

ポイント制による評価

学歴、職歴、年収、研究実績などをポイント化し、合計点が一定基準(70点以上)に達した場合に認定される客観的な評価制度です。

広範な優遇措置

在留期間、永住許可要件、配偶者の就労、親や家事使用人の帯同など、多岐にわたる優遇措置が受けられます。

活動範囲の柔軟性

高度専門職では、主たる活動に関連する範囲で、複数の在留資格にまたがるような活動も一定の条件下で認められる場合があります。

これらの違いにより、高度専門職ビザは、日本で長期的に安定したキャリアを築きたいと考える外国人材にとって、非常に魅力的な選択肢となっています。



2.高度専門職の活動類型:3つのカテゴリー詳解

高度専門職の在留資格は、「高度専門職1号」と「高度専門職2号」に大別されます。さらに高度専門職1号はその活動内容によって、さらに以下の3つの類型に分類されます。


高度専門職1号(イ):高度学術研究活動

「高度学術研究活動」は、主に研究者や大学教授など、学術的な研究活動やその指導、教育を行う外国人材を対象としています。


●対象となる活動例

  • 日本の公私の機関(大学、研究所、企業の研究開発部門など)との契約に基づいて行う研究、研究の指導、または教育をする活動。

  • 例:大学の教授・准教授・助教、政府系研究機関の研究員、民間企業の研究者など。


●ポイント評価の特徴

学歴(博士号取得者への高い配点)、研究実績(学術論文の発表、特許取得など)、研究資金の獲得実績などが重視される傾向にあります。また、所属機関の規模や研究環境も評価の対象となります。


高度専門職1号(ロ):高度専門・技術活動

「高度専門・技術活動」は、自然科学または人文科学の分野に属する専門的な知識や技術を必要とする業務に従事する外国人材を対象としています。一般的な就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」の活動内容を高度化したものと捉えることができます。


●対象となる活動例

  • 日本の公私の機関との契約に基づいて行う、理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する知識若しくは技術を要する業務に従事する活動。


  • 例:ITエンジニア、機械設計技術者、金融アナリスト、コンサルタント、国際法務担当者、マーケティング専門家、医師、弁護士など。


●ポイント評価の特徴

学歴、職務経歴(専門分野での実務経験年数)、年収が主要な評価項目となります。また、日本の国家資格の保有や、IT分野における特定の試験・資格も加点対象となります。


高度専門職1号(ハ):高度経営・管理活動

「高度経営・管理活動」は、日本の企業等で事業の経営または管理に従事する外国人材を対象としています。一般的な就労ビザである「経営・管理」の活動内容を高度化したものと捉えることができます。


●対象となる活動例

  • 日本の公私の機関(企業、団体など)において事業の経営を行い若しくは管理に従事する活動。

  • 例:企業の代表取締役、取締役等の管理者など。


●ポイント評価の特徴

職務経歴(経営者や管理者としての経験年数)、年収が特に重視されます。事業規模や役職なども考慮される要素となります。また、経営管理に関する専門職大学院(MBAなど)の学位も加点対象です。



3.高度人材ポイント制について

高度専門職の認定を受けるためには、「高度人材ポイント制」に基づく評価で70点以上のポイントを獲得する必要があります。このポイントは、申請者の学歴、職務経歴、年収、年齢、研究実績、資格、日本語能力など、多岐にわたる項目を客観的に評価し、合計点で判断されます。


ポイント計算の基本構造

ポイントは、以下の主要なカテゴリーに分類され、それぞれの項目で該当する点数が加算されていきます。

  • イロハで共通の加算項目(学歴、職務経歴、年収)

  • イロハで固有の加算項目(年齢、研究実績、資格、地位)

  • 特別加算(活動期間、日本語能力、特定の大学卒業等)


各カテゴリー内の項目は、原則として重複して加算することはできません(例:学歴で博士号と修士号の両方を持っていても、最も高いポイントが付与される博士号のみが評価対象)。


主要な評価項目と配点(令和7年6月時点)

以下に、主要な評価項目とその一般的な配点を示します。詳細な配点基準は出入国在留管理庁のウェブサイトで確認できます(出入国在留管理庁「ポイント評価の仕組みについて」:https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/newimmiact_3_evaluate_index.html)。


●学歴

  • 博士号取得者:30点(ハのみ20点)

  • 修士号取得者(専門職学位を含む):20点

  • 大学卒業またはこれと同等以上の教育を受けた者:10点

  • 複数の分野で2以上の博士号または修士号を取得している場合:5点


●職務経歴

従事しようとする業務に関連する実務経験年数に応じてポイントが付与されます。

  • 10年以上:20点(ロの場合。ハは25点。イは該当なし)

  • 7年以上10年未満:15点(ハのみ25点)

  • 5年以上7年未満:10点(ハのみ15点)

  • 3年以上5年未満:5点(ハのみ10点)


●年収

年収額と年齢の組み合わせに応じてポイントが付与されます。足切りラインが設けられており、例えば高度専門職第1号(イ)の場合、申請時に30歳未満であれば年収400~500万円で10ポイントが得られますが、年齢が30歳以上の場合、0ポイントとなります(2025年6月現在)。また高度専門職第1号(ロ)(ハ)については更に厳しい足切りラインが設けられており、年収額が300万円に満たない場合は、他の項目の合計点が70点以上でも審査基準を満たさない扱いとなります。活動類型(イ・ロ・ハ)によって、年収のポイント基準が大きく異なるのも特徴です。 以下は高度専門職1号(ロ)の場合(30歳未満)

  • 1,000万円以上:40点

  • 900万円以上1,000万円未満:35点

  • (中略)

  • 400万円以上500万円未満:10点

 ※年収は、将来見込まれる1年間の給与総額(税引前)で判断されます。


●年齢

年齢が若いほど高いポイントが付与されます。

  • 30歳未満:15点

  • 30歳~34歳:10点

  • 35歳~39歳:5点

  • 40歳以上:0点

※(ハ)のみ加算対象外


合格ラインは70点以上

上記の各項目を合算し、合計ポイントが70点以上に達した場合に、高度専門職としての要件を満たすと判断されます。出入国在留管理庁のウェブサイトにはポイント計算表が掲載されており、自身で試算することも可能です。



4.高度専門職ビザで得られる7つの優遇措置

高度専門職の在留資格を取得すると、他の就労ビザでは得られない多くの優遇措置を受けることができます。


複合的な在留活動の許容

通常、在留資格ごとに許可される活動は限定されていますが、高度専門職1号の資格を持つ場合、主たる活動(例:研究活動)に加えて、それと関連する事業を自ら経営する活動など、複数の在留資格にまたがるような活動を包括的に行うことが認められます。これにより、キャリアの幅を広げやすくなります。


在留期間「5年」の一律付与

高度専門職1号の在留資格には、法律上最長の「5年」の在留期間が一律に付与されます。これにより、頻繁な在留期間更新手続きの負担が軽減され、より安定した生活設計が可能となります。また高度専門職2号では、永住同様、在留期間が無期限となります。


永住許可における居住要件の大幅な緩和

日本の永住許可を取得するためには、原則として10年以上の在留歴が必要ですが、高度専門職の外国人材は、この要件が大幅に緩和されます。

  • ポイント計算で70点以上の評価を受けている場合:3年間の継続在留で永住許可申請が可能。

  • ポイント計算で80点以上の評価を受けている場合:1年間の継続在留で永住許可申請が可能。 


配偶者の就労活動の範囲拡大

高度専門職の配偶者の方について、所定の要件を満たした上で、在留資格 「研究」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」又は「興行」に該当する就労活動を認めることとしています(特定活動告示33号)。


一定の条件を満たす親の帯同

高度専門職の外国人材またはその配偶者の7歳未満の子(実子または特別養子)を養育するために、本人または配偶者の親(養親を含む)を日本に呼び寄せ、同居することが認められます。

※親の帯同には、上記の他にも詳細な要件があります。


一定の条件を満たす家事使用人の帯同

高度専門職の世帯年収が1,000万円以上である等の一定の条件を満たす場合、外国で雇用していた家事使用人を引き続き日本で雇用するか、または新たに家事使用人を雇用することが認められます。


入国・在留手続の優先処理

高度専門職に係る入国・在留審査は、他の在留資格に比べて優先的に処理されることになっています。

  • 入国前審査:申請受理からおおむね10日以内を目途

  • 在留審査:申請受理からおおむね5日以内を目途 

これにより、手続きにかかる待機時間が短縮され、スムーズな入国や在留が可能となります。



5.高度専門職2号について

高度専門職1号の資格で3年以上活動を継続すると、「高度専門職2号」への移行を申請する道が開かれます。高度専門職2号は、1号よりもさらに優遇された内容となっています。


高度専門職2号とは?

高度専門職2号は、高度専門職1号の活動を3年以上継続して行ってきた方が申請できる在留資格です。1号の活動類型(イ・ロ・ハ)のいずれかに該当する活動と併せて、ほぼ全ての就労資格の活動を行うことが可能となります。


高度専門職1号から2号への移行要件

高度専門職2号への移行を申請するためには、以下の主要な要件を満たす必要があります。

  • 高度専門職1号の在留資格で3年以上継続して活動を行っていること。

  • ポイント計算において、引き続き70点以上を有していること。

  • 素行が善良であること(日本の法令を遵守していること)。

  • 日本の国益に適合すると認められること。

  • 申請人が本邦において行おうとする活動が我が国の産業及び国民生活に与える影響等の観点から相当でないと認める場合でないこと。

  • 高度専門職2号の活動類型に該当する活動を行うこと。


高度専門職2号の優遇措置

高度専門職2号には1号の優遇措置に加え、以下のメリットが存在します。

  • 在留期間が無期限となる:

    これにより、在留期間更新の必要がなくなり、永住者と同様に安定した在留が可能とな

    ります。


  • 活動制限が大幅に緩和される

    高度専門職1号の活動(イ・ロ・ハのいずれか)と併せて、就労資格に定められるほぼ全ての活動を行うことができます。これにより、キャリアチェンジや副業などが格段に行いやすくなります。



6.高度専門職ビザ申請の基本的な流れと必要書類

高度専門職の在留申請は、通常の就労資格(技人国等)と同様の手順で行います。

  • 新規入国の場合(在留資格認定証明書交付申請): 

    海外にいる外国人の方が、日本に入国して高度専門職としての活動を開始する場合、まず日本の出入国在留管理局に対して「在留資格認定証明書」の交付を申請します。この証明書が交付された後、自国の日本大使館・領事館で査証(ビザ)の発給を受け、日本に入国する流れとなります。


  • 国内からの変更の場合(在留資格変更許可申請): 

    既に日本に他の在留資格(例:「技術・人文知識・国際業務」、「留学」など)で滞在している方が、高度専門職へ資格を変更する場合、日本の出入国在留管理局に対して「在留資格変更許可申請」を行います。許可されれば、新たな在留カードが交付されます。


申請手続きの一般的なフロー

  1. 要件確認とポイント計算: 

    自身が高度専門職の要件を満たすか、ポイントが70点以上に達するかを確認します。


  2. 必要書類の準備: 

    申請に必要な書類を収集・作成します。これには、申請書、ポイント計算表、学歴・職歴・年収を証明する書類、所属機関に関する書類などが含まれます。


  3. 申請書の提出: 

    管轄の出入国在留管理局に申請書類一式を提出します。


  4. 審査: 

    出入国在留管理局による審査が行われます。審査期間中に追加書類の提出を求められることもあります。


  5. 結果通知: 

    審査結果が通知されます。許可の場合は、認定証明書の交付(新規入国の場合)や新しい在留カードの交付(変更の場合)が行われます。


主な必要書類(共通・類型別)の概要

必要書類は、申請者の状況や活動類型によって異なりますが、一般的に以下のような書類が必要となります。

  • 必要書類:

    • 在留資格認定証明書交付申請書 または 在留資格変更許可申請書

    • 写真

    • パスポート及び在留カード(国内からの変更の場合)

    • ポイント計算表及び各項目を証明する資料(学歴証明書、在職証明書、年収証明書、日本語能力に関する資格証明等)

    • 活動類型別の書類(所属機関の概要を明らかにする資料、研究内容や待遇を証明する資料、事業計画書、役員報酬を定める定款の写しまたは株主総会議事録の写しなど)

これらの書類はあくまで一例ですので、正確な情報は出入国在留管理庁のウェブサイトでご確認ください。



7.まとめ

在留資格「高度専門職」は、日本で専門的な能力を活かして活躍したいと考える外国人材にとって、多くのメリットを提供する魅力的な制度です。一律5年の在留期間、永住許可要件の緩和、家族帯同の優遇など、日本での安定的かつ充実した生活基盤を築く上で大きな助けとなります。


長後行政書士事務所では、相談者様一人ひとりの状況を丁寧に把握し、最適なアドバイスとサポートを提供することで、在留資格の取得という目標達成に向けて全力でお手伝いさせて頂いております。

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参考:

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