【帰化申請】帰化に関するQ&A
- 行政書士 日下 雄一朗
- 6月12日
- 読了時間: 43分
更新日:6月24日

外国籍の皆様が、日本への帰化をお考えになる際に抱く様々な疑問にお答えするため、帰化申請に関するQ&Aをまとめました。 この情報が、皆様の帰化申請手続きの一助となれば幸いです。
ご不明な点や、より詳しいご相談をご希望の場合は、どうぞお気軽に長後行政書士事務所までお問い合わせください。
目次
1.帰化申請の基礎知識
Q1:帰化とは何ですか?
A1:帰化とは、その国の国籍を持たない人が、法律の定める手続きと要件を満たした上で、新たにその国の国籍を取得するための制度のことをいいます。日本で帰化が許可されると、日本人としての法的地位を得ることになり、日本のパスポートの発給を受け、選挙権・被選挙権の行使など、日本国民としての権利を得るとともに、原則として、元の国籍を喪失することになります。
Q2:日本に帰化するメリットは何ですか?
A2:日本に帰化することにより、主に以下のようなメリットがあります。
法的な安定性:
在留資格の更新手続きが不要になり、日本での永続的な居住が法的に保証されます。
退去強制の対象となることが原則としてなくなります。
社会的信用の向上:
住宅ローンや事業資金の融資などが受けやすくなる傾向があります。
就職や転職において、国籍による制約がなくなります。
参政権の獲得:
国政選挙や地方選挙への投票権、立候補する権利(被選挙権)が得られます。
戸籍の編製:
日本人としての戸籍が作られ、身分関係が公証されます。
その他:
日本のパスポートが取得でき、多くの国へビザなしまたは簡易な手続きで渡航できるようになります。
就任出来る公務員の幅が広がります。
Q3:日本に帰化する際のデメリットや注意点はありますか?
A3:日本に帰化することにより、主に以下のようなデメリットがあります。
元の国籍の喪失:
日本の国籍法では二重国籍を認めていないため、原則として帰化前の国籍を喪失することになります(なお国籍離脱がその国の法律上不可能な場合など、例外的な取り扱いがなされる可能性あり)。
氏名の変更:
帰化申請の際、日本の法律で使用できる文字(常用漢字、人名用漢字、ひらがな、カタカナ)で新たに氏名を決定する必要があります。元の名前の表音をそのまま日本語に当て嵌めることも可能ではありますが、少なくとも表記については変更となります。
手続きの負担:
帰化申請には多くの書類収集や手続きが必要となり、時間と労力がかかります。
Q4:帰化と永住権の違いは何ですか?
A4:帰化と永住権は、どちらも日本に長期間安定して在留するためのものですが、細部が大きく異なります。比較としては下記の通りです。
項目 | 帰化 | 永住権 |
国籍 | 日本国籍を取得する(元の国籍は原則として喪失) | 元の国籍を保持 |
法的地位 | 日本人 | 在留資格「永住者」を持つ外国人 |
参政権 | あり(選挙権・被選挙権) | なし |
戸籍 | 日本の戸籍が編製される | 日本の戸籍は編製されない |
在留カード | 不要 | 必要(常時携帯義務あり) |
再入国許可 | 不要(日本のパスポートで出入国) | 必要(みなし再入国許可制度あり) |
退去強制 | 原則として対象外 | 対象となる場合がある |
更新手続き | なし | 在留カードの更新(7年ごと)が必要 |
どちらもメリットデメリットが存在する為、どちらを選ぶべきかは個人の状況や将来設計に依存するといえます。
Q5:帰化申請に関する相談は、どこに対して行うことができますか?
A5:帰化申請に関する相談は、主に以下の窓口で行うことができます。
法務局・地方法務局:
帰化申請の受付窓口であり、申請手続きに関する基本的な情報提供や事前相談を行っています。
行政書士:
帰化申請の専門家として、申請書類の作成、収集の代行、法務局への同行、手続き全般に関するアドバイスなど、総合的なサポートを提供します。相談は有料の場合も多いですが、個別の状況に応じた具体的なアドバイスが期待できます。長後行政書士事務所では初回相談無料で行っておりますので、お気軽にご相談ください。
弁護士:
行政書士と同様に帰化申請のサポートを行えます。特に複雑な法的問題を抱えている場合(例:国籍離脱が困難、過去の法的トラブルなど)に適しています。
ご自身の状況や求めるサポートの範囲に応じて、相談先を選ぶと良いでしょう。
2.帰化の諸要件
Q6:帰化に必要な日本での居住期間は、一般の外国人の場合どのくらいですか?(国籍法第五条第一項第一号)
A6:原則として、引き続き5年以上日本に住所を有していることが必要です。この「引き続き」とは、継続して日本に生活の本拠(住所)があることを意味し、一時的な出国や再入国許可を得て出国していた期間も、その連続性が中断しない限りは通算されます。ただし、年間の出国日数が長すぎる場合(おおむね連続して3ヶ月以上、または年間合計で100日程度以上)は、居住の継続性が認められない可能性があります。
Q7:帰化申請において、就労期間と居住期間はどのように関連しますか?(国籍法第五条第一項第一号)
A7:帰化の居住要件を満たすためには、原則として引き続き5年以上日本に住所を有することが必要ですが、このうち直近の3年間は就労系の在留資格(「技術・人文知識・国際業務」、「経営・管理」、「技能」など)で就労していることが求められます(一部例外あり)。
Q8:海外出張が多いのですが、帰化の居住要件に影響はありますか?(国籍法第五条第一項第一号)
A8:海外出張の頻度や期間によっては、居住要件である「引き続き5年以上日本に住所を有する」という点に影響が出る可能性があります。
審査のポイント:
1回の出国期間:
おおむね連続して3ヶ月以上の出国は、生活の本拠(住所)が日本にないと判断されるリスクが高まります。
年間の合計出国日数:
年間でおおむね100日を超える場合も、同様に審査が厳しくなる傾向があります。
出国の理由と頻度:
業務命令等によるやむを得ない出張であることや、日本に家族がいる、日本に自宅があるなど、生活基盤が日本にあることを示す事情も考慮されます。
海外出張が多い方は、その理由、期間、頻度、日本の生活基盤との関連性などを具体的に説明できるようにしておくことが重要です。
Q9:留学生として日本に滞在していた期間のみで、帰化の居住要件を満たすことが出来ますか?(国籍法第五条第一項第一号)
A9:留学生として「留学」の在留資格で日本に滞在していた期間も、帰化の居住要件である「引き続き5年以上日本に住所を有する」という期間には算入されます。 しかし条文に記載されていないものの、5年間の居住期間のうち直近の3年間は就労系の在留資格で就労していることも求められており、留学生としての滞在期間のみでは、こちらの条件を満たすことができません。
したがって、例えば大学4年間を「留学」で過ごしたとしても、その後「技術・人文知識・国際業務」などの就労資格を得て3年間就労する期間が必要となります(一部例外あり)。
Q10:帰化の能力要件とは何ですか?(国籍法第五条第一項第二号)
A10:帰化の能力要件とは、申請者が18歳以上であり、かつ、本国の法律によっても成人の年齢に達していることを指します。 ただし、この要件には緩和規定があり、例えば、未成年者であっても、その親が日本人である場合等には、この18歳以上という年齢要件は免除される可能性があります(簡易帰化)。
Q11:未成年者の子供が親と一緒に帰化申請する場合、能力要件(年齢)はどうなりますか?
A11:親権者である父または母が子供と一緒に帰化申請をする場合、その子供が18歳未満であっても、国籍法第五条第一項第二号の能力要件(18歳以上であること)は免除されます。
Q12:帰化の素行要件とは、具体的にどのようなことですか?(国籍法第五条第一項第三号)
A12:素行要件とは、「素行が善良であること」を指し、日本の法律を守り、社会の規範から逸脱しない善良な市民として生活しているかどうかが審査されます。具体的には、以下の点が総合的に判断されます。
犯罪歴:
懲役、禁錮、罰金などの刑を受けたことがあるか。執行猶予期間中の申請は原則として許可されません。
納税義務の履行・各種保険の加入状況:
所得税、住民税、法人税など、各種税金をきちんと納めているか。未納や滞納がある場合は許可されません。過去に遡って納税状況が確認されます。
社会保険料(年金、健康保険)の支払い状況等も重要です。
交通違反:
軽微な交通違反(駐車違反や一時停止違反など)が数回程度であれば、直ちに不許可となるわけではありませんが、頻繁に繰り返している場合や、悪質な違反(飲酒運転、大幅なスピード違反、無免許運転など)がある場合は、素行が善良でないと判断される可能性が高まります。過去5年程度の違反歴が審査の対象となることが多いです。
社会への迷惑行為の有無:
騒音問題、ゴミ出しルール違反など、地域社会との協調性も間接的に影響する場合があります。
出入国管理及び難民認定法違反の有無:
不法就労、オーバーステイなどの過去がないか。
これらを総合的に見て、日本国民としてふさわしい行動をとっているかが判断されます。
Q13:交通違反があると帰化申請はできませんか?(国籍法第五条第一項第三号)
A13:交通違反があるというだけで、帰化が不許可となるわけではありません。
例えば、駐車違反や一時停止違反、シートベルト装着義務違反などの軽微な違反が過去数年間に数回程度であれば、それだけで直ちに帰化が不許可になる可能性は低いといえます(ただし、その後の改善や反省の態度が見受けられることが前提となります)。
これに対して、短期間に何度も交通違反を繰り返している場合や、ひき逃げなどの悪質な違反がある場合は、素行が善良であるとは認められず、帰化が不許可となる可能性が非常に高くなります。
Q14:税金の滞納があると帰化申請に影響しますか?(国籍法第五条第一項第三号)
A14:税金の滞納は帰化申請において大きなマイナス要因となり、この状態での申請はかなり厳しいと言わざるを得ません。
また帰化申請において税金の納付状況を確認されるのは申請者本人だけではなく、同居の親族(生計を一つにする配偶者など)の納税状況も確認されるため、本人が滞納していなくても、同居の親族が滞納している場合でも要件不適合とみなされる可能性が高いです。
そのため、もし仮にこのような状況である場合は、申請前に全ての未納・滞納を解消し、かつ、その後はきちんと納期限を守って納税している実績を示すために、期間を空けてから申請されるのが無難であるといえるでしょう。
Q15:過去に前科がある場合、帰化申請は不可能ですか?(国籍法第五条第一項第三号)
A15:過去に前科がある場合でも、必ずしも帰化申請が不可能というわけではありません(ただし当然に許可のハードルは高くなります)。
考慮される要素:
犯罪の種類・軽重:
軽微な犯罪か、重大な犯罪か。
刑罰の内容:
罰金、禁錮、懲役など。執行猶予が付いたか、実刑だったか。
刑の執行終了からの経過期間:
刑の執行を終えたり、執行猶予期間が満了したりしてから、どのくらいの期間が経過しているか。一般的には、相当の期間(数年~10年以上、事案により異なる)が経過し、その間、真面目に社会生活を営んでいる実績が必要です。
反省の度合いと更生の状況:
再犯の恐れがないことを示す必要があります。
現在の生活状況:
安定した仕事に就き、社会貢献をしているかなど。
前科の内容によっては、一生涯帰化が認められないケースもあり得ますが、多くの場合では、時間経過と更生の状況によって許可の可能性が出てきます。
ちなみに、執行猶予期間中や、刑の執行が終わって間もない状況での申請は、許可される可能性が極めて低いので、避けるのが無難です。
Q16:生計要件を満たすには、どの程度の収入や資産が必要ですか?(国籍法第五条第一項第四号)
A16:生計要件とは、「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること」を指します。公式に「年収いくら以上」「貯金いくら以上」といった明確な基準が公表されているわけではありませんが、一般的には、年収300万円程度が一つの目安であると言われています。
また以下の点が総合的に審査されます。
安定した収入:
毎月、継続的かつ安定的な収入があることが重要です。正社員でなくとも、契約社員や派遣社員、自営業でも安定性が認められれば問題ありません。
公的扶助(生活保護など)を受けている場合は、原則としてこの要件を満たさないと判断されます。
資産状況:
預貯金、不動産などの資産があればプラスに評価されます。
借入金の状況:
多額の借金(特に消費者金融からの借入など)がある場合は、返済能力と合わせて慎重に審査されます。
家族の収入:
申請者本人に十分な収入がなくても、配偶者や同居の親族に安定した収入があり、世帯全体として安定した生活が送れると判断されれば、要件を満たすことができます。
上記のように、収入額のみで判断されるわけではないため、重要なのは日本で将来にわたって安定して生活していける経済的基盤があるか否かであるといえます。
Q17:家族(配偶者や子供)がいる場合、帰化の生計要件はどのように判断されますか?(国籍法第五条第一項第四号)
A17:家族がいる場合、生計要件は世帯全体で判断されます。つまり、申請者本人だけでなく、配偶者や子供など、生計を一つにする家族全員が安定して生活できるだけの経済力があるかどうかが審査されます。
考慮される点:
世帯収入: 申請者本人と配偶者の収入を合算して評価されます。どちらか一方に十分な収入があれば、もう一方の収入が少ない、あるいは無収入でも許可がおりる可能性があります。
扶養家族の人数: 扶養する家族の人数に応じて、必要な生活費も多くなるため、求められる収入水準も上がります。
上記のように、申請者本人に十分な収入がなくても、配偶者に安定した収入があり、世帯として問題なく生活できると認められれば、生計要件は満たしていると判断される可能性が十分にあります。逆に、申請者本人に収入があっても、扶養家族が多く、世帯全体で見ると生活が苦しいと判断される場合は、要件を満たされていないと判断される可能性があります。
Q18:帰化の喪失要件とは、どのような要件ですか?(国籍法第五条第一項第五号)
A18:帰化の喪失要件とは、日本が原則として二重国籍を認めていないため設けられている要件であり、帰化をすることによる本国の国籍離脱についての確認がなされています。
具体的には、以下のいずれかに該当する必要があります。
無国籍であること:
申請時点でいずれの国の国籍も有していない。
日本の国籍を取得することによって、現在の国籍を自動的に喪失すること:
多くの国では、自国民が他国の国籍を自らの意思で取得した場合、自動的に元の国籍を喪失すると定めています。この場合、帰化許可と同時に元の国籍を失うため、この要件を満たします。
日本の国籍を取得する前に、現在の国籍を離脱できること(または離脱手続き中であること):
元の国の法律で、国籍離脱の手続きが定められており、帰化許可までにその手続きを完了できる見込みがある場合です。 ただし、本人の意思だけでは国籍を離脱できない国(例:兵役義務が完了するまで離脱を認めない国など)の場合や、国籍離脱手続きに非常に長期間を要する場合など、個別の事情によっては、帰化許可後に国籍離脱を行うことを宣誓する形で認められることもあります。
なおこの要件の確認のため、本国の国籍離脱に関する証明書類の提出が求められる可能性があります。
Q19:帰化の思想要件とは、どのような要件ですか?(国籍法第五条第一項第六号)
A19:これは、日本国の基本的な秩序や安全を脅かすような思想や活動に関与していないことの確認を求める要件です。具体的には、以下のような団体や活動に関わったことがないか審査されます。
暴力革命を主張する団体:
日本国憲法や政府を暴力的な手段で転覆させようと計画したり、そのような主張を公然としたりする団体。
テロ組織など:
国内外のテロ組織や、それに類する反社会的な団体。
この要件は、国家の安全保障に関わる重要なものであり、この要件に抵触する事実が認められた場合は、帰化が許可される可能性は極めて低いといえます。逆に、通常の社会生活を送っている方であれば、この要件で問題となることはほぼないといえるでしょう。
3.日本語能力要件
Q20:帰化申請に必要な日本語能力は、どの程度のレベルですか?
A20:帰化申請には、一定の日本語能力が必要です。法律に具体的なレベルが明記されているわけではありませんが、一般的に小学校中学年程度(日本語能力試験N3程度)の読み書き、会話能力が一つの目安であるといわれています。
Q21:帰化申請において、日本語能力はどのように審査されるのですか?
A21:帰化申請における日本語能力の審査は、主に以下の方法で行われます。
申請書類の確認:
申請者本人が作成する「帰化の動機書」の内容や日本語の表現力から、ある程度の読み書き能力が判断されます。
法務局担当官との面談(面接):
帰化申請のプロセスでは帰化申請時や事前相談も含めて、数回の面談(面接)が行われます。この面談は全て日本語で行われ、担当官は申請者との会話を通じて、日本語の理解力や会話能力を直接確認します。
質問の内容を正確に理解し、自分の言葉で適切に回答できるかが重要です。
筆記テスト(場合による):
面談では担当官が不要と判断した場合を除き、簡単な日本語の読み書きテスト(小学校低学年レベルの漢字の読み書きや短い文章の理解など)が行われます。
日本語学校の修了証や日本語能力試験(JLPT)の認定証などは、参考資料として提出できますが、それだけで能力が判断されるわけではなく、あくまで総合的な審査となります。不安な場合は、事前に日本語の学習を進めておくことをお勧めします。
4.申請手続きと流れ
Q22:帰化申請の大まかな流れはどのようになりますか?
A22:帰化申請の大まかな流れは、一般的に以下のようになります。
事前相談(法務局):
管轄の法務局・地方法務局に予約を取り、帰化申請が可能かどうか、どのような書類が必要かなどの相談をします。
必要書類の収集・作成:
指示された書類を国内外から収集し、申請書類を作成します。非常に多くの書類が必要となり、翻訳が必要なものもあります。
帰化許可申請書の提出(法務局):
収集・作成した書類一式を法務局の担当官に点検してもらい、不備がないか確認を受けます。
書類に不備がなければ、正式に申請が受理されます。申請者の受付番号が通知されます。
書類審査・実態調査:
法務局による書類内容の詳細な審査が行われます。必要に応じて、家庭訪問や職場訪問などが行われることもあります。
面接(法務局):
申請者本人や、場合によっては同居家族などが法務局に呼ばれ、担当官による面接が行われます。日本語能力、帰化の意思、生活状況などが確認されます。
法務大臣への送付・審査:
法務局での審査が終わると、書類は法務省へ送付され、最終的な審査が行われます。
結果の通知:
帰化が許可された場合は官報に告示され、本人にも法務局から通知があります。不許可の場合も本人に通知されます。
帰化後の手続き:
帰化が許可されたら、法務局にて「帰化者の身分証明書」の交付申請を行います。その後市区町村役場で帰化届の提出、戸籍の作成、外国人登録証明書(または在留カード)の返納、新しい日本のパスポートの申請などを行います。
この流れは一般的なものであり、行政書士に依頼する場合等、多少異なる場合がございます。
Q23:帰化申請はどこで行うのですか?
A23:帰化申請は、申請者の住所地を管轄する法務局または地方法務局で行います。
管轄の確認方法:
法務省のウェブサイトで、ご自身の住所地を管轄する法務局・地方法務局を調べることができます。
最寄りの法務局に電話で問い合わせて確認することも可能です。
最初に事前相談に行く際も、この管轄の法務局・地方法務局に予約を入れることになります。
Q24:帰化申請の相談は予約が必要ですか?
A24:はい、法務局・地方法務局での帰化申請に関する相談は、原則として予約が必要です。 予約なしで訪問しても、担当者が不在であったり、他の相談者で対応できなかったりする可能性が高いため、事前に電話などで予約を取るようにしましょう。
なお予約の際には、相談したい内容(例:初めての帰化相談、必要書類の確認など)を伝えるとその後の流れがスムーズです。
Q25:帰化申請の標準的な審査期間はどのくらいですか?
A25:帰化申請の審査期間は、申請者の国籍、家族構成、職業、日本での在留状況、提出書類の準備状況など、個々のケースによって大きく異なりますが、一般的には申請が受理されてから結果が出るまでおおむね8ヶ月から1年半程度かかることが多いです(複雑な事案では2年以上かかることも)。申請準備期間(書類収集など)も含めると、さらに長い期間を見込む必要があります。
Q26:帰化申請の面接では、どのようなことを聞かれるのですか?
A26:帰化申請の面接は、法務局の担当官が申請書類の内容確認や、帰化の意思、日本での生活状況、日本語能力などを直接確認する目的で行われます。聞かれる内容は多岐にわたりますが、主に以下のような事項です。
申請内容の確認:
申請書類に記載した内容(氏名、生年月日、家族構成、学歴、職歴、収入、資産、負債、来日経緯、在留歴など)について、改めて口頭で確認されます。
帰化の動機・意思:
なぜ日本に帰化したいのか、具体的な理由や日本への思い。
日本人として今後どのように生活していきたいか。
元の国籍を喪失することへの理解。
生活状況:
現在の仕事内容、収入、支出、生活費の管理方法。
住居の状況(持ち家か賃貸か、間取りなど)。
家族との関係、日常生活の様子。
日本の習慣や文化への適応度。
素行:
交通違反歴、犯罪歴の有無(正直に申告することが重要です)。
納税や年金、健康保険料の支払い状況。
日本語能力:
面接自体が日本語で行われるため、担当官の質問を理解し、日本語で的確に答えられるかが評価されます。
簡単な日本語の読み書きテストが行われることもあります。
その他:
日本に関する基本的な知識。
宣誓書の内容の理解。
面接は緊張すると思いますが、落ち着いて誠実に回答することが重要です。事前に提出した書類の内容と矛盾がないように、よく確認しておきましょう。
Q27:帰化申請の結果はどのように通知されるのですか?
A27:帰化申請の結果は、法務局から申請者本人に対して通知されます。
許可の場合:
まず、法務大臣の決裁後、官報にその旨が告示されます。官報に告示された日が、日本国籍の取得日となります。
官報告示後、しばらくして申請を受け付けた法務局から申請者本人宛に「帰化者の身分証明書」の交付に関する連絡があります。この身分証明書は、帰化後の戸籍届出などに必要な重要な書類です。
不許可の場合:
法務局から申請者本人宛に、不許可である旨の通知書が郵送されます。
Q28:帰化が許可された後、どのような手続きが必要ですか?
A28:帰化が許可され、官報に告示された後は、下記の手続きを行う必要があります。
帰化者の身分証明書の受領:
法務局から連絡があるので、指定された日時に法務局へ行き、「帰化者の身分証明書」を受領します。
帰化届の提出:
官報告示の日から1ヶ月以内に、住所地または本籍地を定める市区町村役場に「帰化届」を提出します。この届出により、日本の戸籍が新たに編製されます。
在留カードの返納:
帰化により日本国籍を取得したため、外国人としての登録は抹消されます。帰化届提出の際などに、市区町村役場経由で、または直接入国管理局に在留カード(または特別永住者証明書・外国人登録証明書)を返納します(返納期限は帰化の日から14日以内)。
各種名義変更手続き:
運転免許証、銀行口座、クレジットカード、不動産登記、生命保険、勤務先への届出など、氏名や本籍地(国籍)が変更になったことに伴う各種名義変更手続きを行います。
日本のパスポートの申請:
戸籍謄本(または戸籍抄本)が取得できるようになったら、本国のパスポートを返納し、日本のパスポートの発行が可能となります。
マイナンバーカード(または通知カード)の変更手続き:
氏名変更などに伴い、市区町村役場で手続きが必要です。
その他、日本国籍の取得によって本国籍の離脱が行われない場合については、個別に本国の国籍離脱手続きを行う等、上記以外にも手続きが必要となる可能性があります。
Q29:帰化が不許可になった場合、再申請は可能ですか?
A29:はい、帰化が不許可になった場合でも、再申請することは可能です。 ただし、不許可になった理由を改善しないまま再申請しても、再び不許可になる可能性が高いです。不許可の原因をしっかりと分析・改善し、準備を整えてから再申請に臨むことが大切です。
Q30:帰化申請中に転職や転居など、状況に変化があった場合はどうすればよいですか?
A30:帰化申請中に、申請書に記載した内容に変更が生じた場合(例:転職、退職、転居、結婚、離婚、出産、氏名変更、パスポートの更新、長期の海外渡航予定など)は、速やかに申請先の法務局の担当官に報告する必要があります。
報告の重要性:
変更事項を報告しないと、審査に影響が出たり、最悪の場合、虚偽申請とみなされたりする可能性があります(特に生計状況や居住状況に影響する変更)
報告方法:
まずは電話で法務局の担当官に連絡し、変更内容を伝えます。その後、担当官の指示に従い、必要な追加書類(例:新しい勤務先の在職証明書、新しい住民票など)を提出します。
変更が審査に与える影響:
変更内容によっては、審査期間が長引いたり、追加の調査が行われたりすることがあります。
例えば、転職した場合、新しい職場での安定性などが改めて審査される可能性があります。
Q31:帰化申請に必要な「帰化の動機書」は、どのように書けばよいですか?
A31:「帰化の動機書」は、申請者が自筆で日本語により作成する書類で、なぜ日本に帰化したいのか、その理由や経緯、日本に対する思い、帰化後の抱負などを具体的に記述するものです。審査官が申請者の帰化意思の強さや真摯さを判断する上で重要な書類の一つとなります。
記載すべき主な内容の例:
来日の経緯と動機、現在の生活状況:
いつ、どのような目的で来日し、現在どのような生活(仕事、家族、地域との関わりなど)を送っているか。
日本で生活する中で感じたこと:
日本のどのような点に魅力を感じ、永住したいと思うようになったか。日本の社会や文化についてどのように考えているか。
帰化を希望する具体的な理由:
なぜ永住権ではなく帰化を選んだのか。日本人として生活したい具体的な理由など。
帰化後の抱負・貢献:
これまで日本に対して、どのような社会貢献を行い、また今後どのように社会に貢献していきたいか。将来の夢や目標など。
母国への思いと日本の国籍を選択する決意:
母国に対する気持ちと、それでも日本の国籍を選択するに至った決意。
作成時の注意点:
自筆で丁寧に書く:
申請者本人が手書きで作成します(代筆並びにPCでの作成は原則不可)。
独自の内容を記載する:
定型文を写すのではなく、ご自身の正直な気持ちや具体的なエピソードを交えて書くことが大切です。
日本語能力を示す:
ある程度の日本語の文章構成力や語彙力も間接的に評価されます。誤字脱字に注意し、分かりやすい文章を心がけましょう。
否定的な内容は避ける:
他国や他人を批判するような内容は避け、前向きな内容でまとめるのが望ましいです。
文字数は500文字〜800文字程度を目安に:
動機書の文字数について、特段の定めはありませんが、長すぎても短すぎてもデメリットが生じる可能性があります。500文字〜800文字程度を目安に作成するのがおすすめです。
書き方に悩む場合は、行政書士などの専門家に相談し、アドバイスを受けながら作成するのも一つの手です。長後行政書士事務所でも、動機書作成に関するご相談に応じております。
5.必要書類
Q32:帰化申請には、どのような種類の書類が必要になりますか?
A32:帰化申請に必要な書類は非常に多岐にわたり、申請者の国籍、身分関係、職業、生活状況などによって異なります。法務局の事前相談で具体的な指示がありますが、一般的に下記のような書類が必要となります。
申請書・親族の概要を記載した書面など:
帰化許可申請書、親族の概要、履歴書、生計の概要、事業の概要(自営業の場合)、帰化の動機書など。
国籍・身分関係を証明する書類:
本国の戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書、パスポートの写し、外国人登録原票記載事項証明書(または閉鎖外国人登録原票)、住民票など。
親族関係を証明するために、両親や兄弟姉妹の身分証明書類なども必要になる場合があります。
日本での居住歴を証明する書類:
住民票(除住民票)、在留カードの写しなど。
収入・資産・納税に関する書類:
在職証明書、給与明細書、源泉徴収票、確定申告書の控え、納税証明書、課税証明書、預貯金通帳の写し、不動産登記事項証明書など。
日本語能力に関する資料(任意):
日本語能力試験(JLPT)の認定証、日本語学校の卒業証明書など。
その他:
運転記録証明書、自宅や勤務先付近の略図など。
会社の登記事項証明書、営業許可証の写し(会社経営者や個人事業主の場合)。
これらの書類は、日本国内で取得するものと、本国から取り寄せる必要があるものがあります。また、外国語で作成された書類は、原則として日本語の翻訳文を添付する必要があります。
Q33:本国の書類で、取得が非常に難しい、あるいは取得できないものがある場合はどうすればよいですか?
A33:本国の政情不安や法制度上の理由、あるいは災害などで、どうしても必要な書類が取得できない場合、または取得に著しく時間を要する場合があります。 そのような場合は、まず以下の対応を検討します。
代替書類の検討:
法務局の担当官に事情を説明し、その書類の代わりに提出できる他の書類がないか相談します。例えば、出生証明書がない場合に、それに準ずる公的な記録、あるいは親族からの申述書(事情説明書)などでの代用が認められるケースも稀にあります。
申述書の作成:
書類が取得できない理由や経緯、そしてその書類で証明しようとしていた事実関係について、詳細な申述書(事情説明書)を作成し提出します。なぜ取得できないのか、どのような努力をしたのかを具体的に記載します。
最終的には法務局の判断によりますが、正直に状況を説明し、誠実に対応することが重要です。取得できないからといって、偽造書類を提出するようなことは絶対に避けましょう。
Q34:帰化申請書類の翻訳は誰が行うべきですか?また、翻訳に関する注意点はありますか?
A34:外国語で作成された書類は、原則として全て日本語の翻訳文を添付する必要があります。翻訳にあたっての注意点は以下の通りです。
翻訳者について:
翻訳者については特段の指定がなく、申請者本人が行っても、翻訳業者や行政書士などの第三者に依頼しても問題ありません。
ただし、誰が翻訳したかに関わらず、翻訳者の氏名、住所、翻訳年月日を付記する必要があります。
翻訳に関する注意点:
正確性: 原本の内容を忠実かつ正確に翻訳することが最も重要です。意訳や省略は避け、固有名詞(人名、地名など)のカタカナ表記もできるだけ統一します。
書式の再現: 可能であれば、原本の書式(レイアウト)に近い形で翻訳文を作成すると、審査官が内容を対比しやすくなります。
全ての記載事項の翻訳: 欄外の注記なども含め、原則として書類上の全ての文字情報を翻訳します。
公証は不要: 日本の帰化申請においては、翻訳文に対する公証(例:翻訳認証)は不要となります。
誤訳や不正確な翻訳は、審査に影響を与えたり、追加説明を求められたりする原因となりますので、自信がない場合は専門家に依頼することをお勧めします。長後行政書士事務所でも翻訳に関するご相談に応じております。
Q35:帰化申請に必要な納税証明書には、どのような種類がありますか?また、どこで取得できますか?
A35:帰化申請では、適正に納税義務を果たしていることを証明するために、複数の納税証明書の提出が求められます。主に以下のようなものがあります。
種類 | 内容 | 主な取得場所 | 備考 |
国税に関するもの | |||
源泉徴収票 | 給与所得者が勤務先から交付されるもの | 勤務先 | 直近1年分 |
個人の所得税の納税 証明書 (その1) | 納付すべき税額、納付済額、未納額の証明 | 税務署 | 直近3年分。確定申告義務がある方のみ。 |
個人の所得税の納税 証明書 (その2) | 所得金額の証明 | 税務署 | 直近3年分。確定申告義務がある方のみ。 |
確定申告書の控え | 事業主などが税務署に提出したものの控え | 申請者保管(受付印のあるもの) | 直近1年分。確定申告義務がある方のみ。 |
地方税に関するもの | |||
住民税の課税(非課税)証明書 | 住民税の課税額および前年の所得額の証明 | 住所地の市区町村役場 | 直近1年分 |
住民税の納税証明書 | 住民税(都道府県民税・市町村民税)の納付状況の証明 | 住所地の市区町 村役場 | 前年1年分 |
会社経営者・役員の場合 | |||
法人税等の納税証明書 | 法人税、法人住民税、法人事業税、消費税などの会社の納税証明 | 税務署、都道府県税事務所、市区町村役場 | 直近1〜3年分。 |
これらは一般的な例であり、申請者の状況(会社員、自営業、会社経営者など)によって必要な書類や年数が異なる可能性がありますので、必ず法務局の指示に従ってください。
Q36:帰化申請で収入を証明するために、どのような書類が必要ですか?
A36:帰化申請において生計要件(安定した生活を送れる経済力)を証明するために、収入に関する書類の提出が求められます。申請者の就労形態によって必要な書類が異なります。
会社員・公務員・団体職員などの給与所得者の場合:
在勤及び給与証明書: 現在の勤務先に発行を依頼します。勤務状況や役職、勤続年数、給与明細等が記載されます。
源泉徴収票: 直近1年分。勤務先から発行されます。
会社経営者・役員の場合:
会社の登記事項証明書(履歴事項全部証明書): 法務局で取得します。
個人事業主(自営業者)の場合:
事業内容を証明する資料: 営業許可証の写しなど。
その他(不動産収入などがある場合):
不動産の賃貸借契約書の写し、不動産収入に関する確定申告書の控えなど。
上記の他、各種課税証明書、納税証明書、確定申告書の控え等が必要となります。給与所得者又は事業経営者(法人・個人)によって異なりますので、法務局の指示に従い準備を進める必要があります。
Q37:帰化申請に必要な「身分関係を証明する書類」とは、どのような書類ですか?
A37:「身分関係を証明する書類」とは、申請者本人及びその親族(父母、兄弟姉妹、配偶者、子など)の身分事項(氏名、生年月日、出生地、親子関係、婚姻関係など)を公的に証明する書類のことです。具体的には下記のような書類が必要になります。
原則として、本国で取得する書類:
出生証明書
戸籍謄本(またはそれに類する公的証明書。親族関係や婚姻歴などが記載されたもの。国によっては戸籍制度がない場合、それに代わる家族関係証明書などが必要。なお日本に帰化している親族がいる場合は、日本の戸籍謄本も必要となります)
婚姻証明書
離婚証明書
死亡証明書
原則として、日本で取得する書類:
出生届の記載事項証明書
死亡届の記載事項証明書
婚姻届の記載事項証明書
離婚届の記載事項証明書(裁判離婚の場合は、調停調書、和解調書、認諾調書の謄本又は確定証明書のついた審判書若しくは判決書の謄本等も必要です)
親権者変更届等の記載事項証明書(裁判離婚の場合は、調停調書、和解調書、認諾調書の謄本又は確定証明書のついた審判書若しくは判決書の謄本等も必要です)
養子縁組届の記載事項証明書
これらの書類は、原則各国が発行する書類であるため、取得に時間がかかる場合があります。また、外国語で作成された書類は、原則として全て日本語の翻訳文を添付する必要があります。どの範囲の親族の書類が必要になるかは、申請者の状況や本国の法制度によって異なりますので、法務局の指示をよく確認してください。
Q38:会社経営者や個人事業主が帰化申請をする場合、会社員と比べて追加で必要になる主な書類は何ですか?
A38:会社経営者や個人事業主が帰化申請をする場合、生計要件や事業の安定性を詳細に証明する書類が追加で求められます。主な追加書類は以下の通りです。
会社経営者(株式会社の代表取締役など)の場合:
事業の概要を記載した書類
会社の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
営業許可証、免許証等の写し(許認可が必要な事業の場合)
会社の決算報告書(貸借対照表、損益計算書など)
法人税の確定申告書の控え(受付印のあるもの)
法人税、法人住民税、法人事業税、消費税などの納税証明書
源泉徴収簿及び納付書の写し
厚生年金保険法・健康保険法適用事業所の事業主に係る納付証明書
個人事業主(自営業者)の場合:
事業の概要を記載した書類
確定申告書の控え(受付印のあるもの)
営業許可証、免許証等の写し(許認可が必要な事業の場合)
所得税の納税証明書(その1、その2)
個人事業税の納税証明書
消費税の申告書控え及び納税証明書(課税事業者の場合)
これらの書類を通じて、事業の継続性、安定性、収益性、そして法令遵守の状況などが審査されます。
Q39:帰化申請に必要な書類には、有効期限がありますか?
A39:はい、帰化申請に提出する書類の多くには、法務局から「発行後〇ヶ月以内のもの」といった形で有効期限が指定されます(発行後3ヶ月以内のものが多いです)。
個別の書類ごとに期限が設定されていますので、法務局の指示に沿って期限内に書類が集まるよう準備を進める必要があります。
6.家族と帰化
Q40:家族(配偶者や子供)と一緒に帰化申請をするメリットは何ですか?
A40:家族と一緒に帰化申請を行う場合、以下のようなメリットがあります。
手続きの一体性・効率性:
同時に申請することで、一部書類を共通して使用できる場合があり、書類収集の手間が軽減されます。
法務局での面接などが、家族単位で調整・実施されることもあり、手続きがスムーズに進む可能性があります。
審査における有利な配慮:
親と子が一緒に帰化申請をする場合、その未成年の子供について住居要件や能力要件(年齢)が緩和されます。
帰化後の生活の一体感:
家族全員が同じ国籍になることで、子供の進学や就職、家族での海外旅行などで、国籍の違いによる煩雑さがなくなります。
家族全員で帰化することにより、同一の戸籍に家族全員が入ることが可能となります。
Q41:配偶者が日本人の場合、帰化の要件は緩和されますか?
A41:はい、配偶者が日本人である外国人の場合、一般の外国人と比較して帰化の要件の一部が緩和されます。これは国籍法第七条に定められており、「簡易帰化」と呼ばれるものの一つです。
居住要件:
原則「引き続き5年以上日本に住所を有すること」が必要ですが、日本人の配偶者の場合は、「引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有する」ことで足ります。
または、「婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有する」ことでも可能です。つまり、海外で結婚して3年以上経過し、その後日本で1年以上暮らしていれば、日本での居住期間が短くても申請が可能となります。
能力要件(年齢):
通常帰化申請を行う場合、18歳以上である必要がありますが、日本人の配偶者である場合は、この年齢要件は問われません(ただし有効に婚姻できる年齢であるかは別途考慮されます)。
Q42:子供の帰化申請について、特に注意すべき点はありますか?
A42:子供の帰化申請(特に未成年の場合)については、いくつかの注意点があります。
申請の主体と意思確認:
子供が15歳未満の場合、法定代理人(通常は親権者である親)が代わって帰化申請を行います。
これに対して、子供が15歳以上の場合は、本人の帰化意思が尊重され、本人自身が申請手続きに関与する必要があります。
親の帰化との関連:
親が帰化しない(またはできない)状況で子供だけが帰化を希望する場合、その理由や子供の日本での養育・生活環境などがより慎重に審査される可能性があります。
Q43:親が帰化した場合、その子供の国籍はどうなりますか?
A43:親が帰化した場合の子供の国籍については、子供の年齢や状況によっていくつかのケースが考えられます。
親の帰化時に、子供が既に外国籍で存在する場合:
親だけが帰化し、子供が外国籍のままである場合、子供は自動的には日本国籍を取得しません。
親の帰化時に、子供がまだ生まれていない場合:
親が日本国籍を取得した後に生まれた子供は、出生により日本国籍を取得します。ただし、配偶者が日本国籍を有していない場合や、出生地が日本国外であった場合等、日本国籍以外の国籍も取得(二重国籍)した場合には、別途手続きを行わなければ、日本国籍を喪失する可能性があります。
つまり、親が帰化しても、既に外国籍で存在する子供が自動的に日本国籍になるわけではなく、子供自身も(年齢に応じて親が代理する形で)帰化申請を行うか、または別の法的根拠に基づいて国籍取得の手続きを行う必要があります。
Q44:家族の中に帰化申請に反対している人がいる場合、申請に影響はありますか?
A44:家族の中に帰化申請に反対している人がいる場合、その事実が直接的に帰化の不許可理由となるわけではありませんが、状況によっては審査に間接的な影響を与える可能性は否定できません。
影響が考えられるケース:
特に、生計を同一にする配偶者が強く反対しており、それが原因で家庭内が不和であると判断される場合、安定した生活基盤という点で懸念材料とされる可能性があります。
配偶者が協力してくれないことで、必要書類(例:配偶者の収入証明や納税証明など)の収集が困難になることも考えられます。
重要なのは、申請者本人の帰化意思の強固さ、日本での生活基盤の安定性、そして日本の社会への適応性です。家族の反対がある場合は、その状況や理由、そしてそれに対して申請者がどのように考えて行動しているかを、面接などで正直に説明できるように準備しておくことが望ましいです。可能であれば、家族とよく話し合い、理解を得る努力をすることも大切です。
7.審査のポイントと具体的な注意点
Q45:帰化申請の実態調査として、自宅や職場への訪問は本当にあるのでしょうか?ある場合、どのような点を見られますか?
A45:はい、帰化申請のプロセスにおいて、法務局の担当官による実態調査として、ご自宅や職場への訪問が行われる可能性はあります。ただし、全ての申請者に対して実施されるわけではなく、必要に応じて行われるものです。
自宅訪問(家庭訪問)の目的とチェックポイント:
目的:
申請書類に記載された通りの生活実態があるか、家族関係は良好か、日本社会にどの程度溶け込んでいるかなどを確認します。
見られる点:
表札や郵便受け: 申請者の氏名がきちんと表示されているか。
居住状況: 申請書通りの間取りか、生活感がきちんとあるか(申請のためだけに借りた部屋でないか)。
家の中の様子: 整理整頓の状況、日本語の書籍の有無、子供の学習机の様子などから、日本での定住性や同化度を推察します。
近隣住民への聞き込み(稀に行われる): 申請者の普段の様子や、地域との関わりについて質問されることがあります。
職場訪問の目的とチェックポイント:
目的:
申請書類に記載された通りの勤務実態があるか、職場で円滑な人間関係を築けているかなどを確認します。
見られる点:
在籍の事実確認: 実際にその会社に勤務しているか。
勤務態度や日本語能力: 上司や同僚への聞き取りを通じて、仕事への取り組み方や、業務上のコミュニケーションに問題がないかなどを確認します。
これらの訪問は、事前に連絡がある場合のほか、抜き打ちで行われる可能性もあります。日頃から、申請書類の内容と相違のない、誠実な生活を送ることが何よりも大切です。
Q46:帰化申請中に、母国へ一時帰国したり、海外旅行へ行ったりする際の注意点を教えてください。
A46:帰化申請中に海外へ渡航すること自体は可能ですが、理由のない渡航については、おすすめは致しません。やむを得ない理由での渡航の場合は、居住要件である「引き続き日本に住所を有する」という点に疑義が生じないよう、注意が必要となります。
渡航前の報告:
海外へ渡航する予定が決まったら、事前にその旨を法務局の担当官に報告することが望ましいです。渡航期間、目的、渡航先などを伝えておきましょう。
渡航期間の目安:
1回の渡航が長期にわたる(目安として連続3ヶ月以上)場合や、年間の合計出国日数が多くなる(目安として年間100日以上)場合は、生活の拠点が日本にないと判断されるリスクが高まります。
渡航の理由:
渡航理由が、会社の業務命令による出張、家族の冠婚葬祭など、やむを得ない社会通念上相当な理由であれば、比較的理解されやすいです。単なる長期の観光旅行などは、理由を慎重に説明する必要があります。
申請中の海外渡航は、その期間や理由が審査に影響を与える可能性があります。渡航前に法務局の担当官に確認することをお勧めいたします。
Q47:帰化を考えていますが、転職したばかりです。申請のタイミングはいつが良いでしょうか?
A47:転職と帰化申請のタイミングは、生計要件の「安定性」を証明する上で非常に重要な問題です。転職直後の申請は、可能な限り避けるべきであるといえます。
転職後の申請の目安:
新しい職場に転職してから、最低でも1年以上は勤務し、安定して収入を得ている実績を作ってから申請することが望ましいです。
これにより、転職先での仕事が長続きし、今後も継続的に収入が得られるという「安定性」を客観的に示すことができます。
転職直後の申請が不利になる理由:
勤続年数が短いと、すぐにまた辞めてしまうのではないか、収入が不安定になるのではないかと判断される可能性があります。
試用期間中や、1年未満の契約社員としての雇用形態の場合、安定した職とは見なされにくいことがあります。
キャリアアップのための転職の場合:
収入が増える、より安定した企業へ移るなど、キャリアアップを目的とした前向きな転職である場合は、その経緯を「履歴書」や「帰化の動機書」で具体的に説明することで、プラスに評価される可能性もあります。しかし、その場合でも転職後すぐの申請は避け、一定の勤務実績を積むことが賢明です。
帰化申請は長期的な視点で準備することが大切です。焦って申請するのではなく、まずは新しい職場での基盤を固めることを優先してください。
Q48:個人事業主です。過去の決算で赤字の年がありましたが、帰化申請は不利になりますか?
A48:個人事業主の方で、過去の決算に赤字の年があった場合、それだけで直ちに帰化が不許可になるわけではないものの、生計要件の観点から大きく不利になると言わざるを得ません。
審査で考慮されるポイント:
赤字の理由:
赤字になった理由が、事業拡大のための先行投資や、取引先の倒産、社会情勢(例:感染症の流行など)といった、やむを得ない外的要因によるものである場合は、その旨を具体的に説明できれば考慮される可能性があります。
赤字の期間と程度:
1期だけの一時的な赤字か、複数年にわたり赤字が続いているか。赤字額が事業規模に比べて大きいか。慢性的な経営不振と判断されると厳しくなります。
直近の経営状況:
申請直近の年度(できれば2期以上)で黒字に転換しており、経営が改善していることを示すことが非常に重要です。
納税・社会保険料の状況:
赤字であっても、納税義務(源泉所得税など)や社会保険料の支払いをきちんと行っていることは必須条件です。
赤字決算がある場合は、その理由と現在の改善状況について、説得力のある説明資料(事業計画書など)を準備することが有効です。専門家と相談しながら慎重に準備を進めることをお勧めします。
Q49:日本国外に住む親に毎月送金しています。このことは、帰化の生計要件に影響しますか?
A49:国外の親族への送金自体が、帰化申請において直ちに不利になることはありません。しかし、生計要件の審査において、その金額や理由が確認されることがあります。
審査のポイント:
送金後の生計維持能力:
最も重要なのは、送金をした上で、申請者本人とその日本国内の家族が安定した生活を維持できているかという点です。送金額が収入に対して過大で、日本での生活が困窮していると判断されると、生計要件を満たさないとされる可能性があります。
「生計の概要」への記載:
申請書類の「生計の概要」には、仕送りの事実を正直に記載する必要があります。ここで事実を隠すと、虚偽申告とみなされるリスクがあります。
結論として、日本国内での生活基盤がしっかりしており、その上で余剰資金から常識の範囲内で仕送りをしているのであれば、大きな問題にはなりません。ご自身の収入と支出のバランスをきちんと管理・説明できることが重要です。
Q50:長後行政書士事務所に帰化申請を依頼するメリットは何ですか?
A50:長後行政書士事務所に帰化申請をご依頼いただくことで、以下のようなメリットがございます。
専門家による的確なアドバイスと戦略立案:
お客様一人ひとりの状況(在留歴、職歴、収入、家族構成、過去の経歴など)を詳細にヒアリングし、許可の可能性を的確に判断いたします。
許可取得に向けて、どのような書類を準備し、どのような点をアピールすべきか、個別の状況に合わせた最適な申請戦略をご提案します。
質の高い申請書類の作成サポート:
帰化申請は、提出書類の正確性と網羅性が極めて重要です。当事務所では、豊富な経験に基づき、審査官に分かりやすく、かつ説得力のある申請書類の作成をサポートいたします。
お客様ご自身では気づきにくい細かな点や、有利になる可能性のある情報の掘り起こしもお手伝いします。
明確な料金体系:
ご依頼いただく前に、必ずサービス内容と費用について明確にご説明し、お見積りを提示いたします。
ご納得いただいた上で業務に着手し、不必要な追加費用が発生しないよう努めます。
安心の返金保証制度:
当事務所が可能と判断したにも関わらず、万が一不許可となってしまった場合、依頼料の全額を返金保証。理由なくお金だけを失うという可能性は一切ございません。
帰化許可後に必要となる手続きもご案内:
当事務所では帰化許可の取得で終了ではなく、帰化後に必要となるお手続きにつきましてもご案内。帰化後に何をするべきかわからないといった不安にも対応させて頂きます。
長後行政書士事務所では、帰化申請に関する豊富な経験と実績に基づき、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適なサポートを提供しております。初回相談無料となっておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
参考:
法務省「国籍Q&A」:
法務省「帰化許可申請」:
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