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【帰化申請】日本における3つの帰化申請 普通帰化、簡易帰化、大帰化について

  • 執筆者の写真: 行政書士 日下 雄一朗
    行政書士 日下 雄一朗
  • 6月17日
  • 読了時間: 10分
3つの書類(白紙)

帰化申請とは、外国籍の方が日本の国籍を取得し、日本人として法的に認められるための手続きを指します。日本国籍を取得することにより、参政権の付与、社会保障制度の完全な享受、日本国のパスポートの発行、そして在留資格の更新手続きの不要化など、生活の安定性や社会参加の幅が大きく向上します。


本記事では、現在日本で就労系の在留資格を有し、将来的に日本への永住や日本国籍の取得を検討されている在留外国人の方々を対象に、日本における帰化申請の主要な3つの区分である「普通帰化」「簡易帰化」「大帰化」について、それぞれの要件や手続きの概要、相違点を詳細に解説いたします。


目次

1.日本における帰化申請の3つの区分

日本の国籍法では、外国人が日本国籍を取得するための帰化について、主に3つの区分を設けています。

  • 普通帰化

    いわゆる一般的な帰化申請のこと。原則的な要件を満たして申請する形態です。


  • 簡易帰化

    日本国民の子、日本人の配偶者、長年日本に居住しているなど、日本と一定の特別の関係を有する外国人に対し、普通帰化の一部の要件が緩和される形態です。


  • 大帰化

    日本に対して特別の功労があった外国人に対し、国会の承認を得て許可される極めて例外的な形態です。


これらの区分により、申請者の状況に応じた適切な手続きが定められています。以下、それぞれの区分について詳述いたします。



2.普通帰化:原則的な帰化申請

普通帰化は、日本との特別な身分関係や地縁的関係を持たない外国人が、日本国籍の取得を希望する場合の基本的な手続きで、いわゆる一般的な帰化申請のことです。国籍法第5条にその要件が定められています。


普通帰化の対象者

日本に一定期間以上居住し、安定した生活を営んでいる成人の外国人で、日本の法律を遵守し、日本社会の一員として生活していく意思のある方が主な対象となります。就労系の在留資格で日本に滞在し、生活基盤を築いてこられた方の多くが、この普通帰化を目指すことになります。


普通帰化の主要な要件

普通帰化が許可されるためには、以下の6つの要件を全て満たす必要があります。


●住所要件(国籍法第五条第一項第一号)

原則として、引き続き5年以上日本に住所を有することが必要となります。この「引き続き」とは、連続して日本に居住していることを意味し、長期の出国(おおむね年間100日以上、または1回の出国で3ヶ月以上)があると、連続性が途切れたと判断される可能性があります。また、この5年間のうち、就労可能な在留資格(「技術・人文知識・国際業務」、「経営・管理」など)をもって3年以上の在留実績が求められます。


●能力要件(国籍法第五条第一項第二号)

申請者が18歳以上であり、かつ本国の法律によっても能力者(成人と同様の法的行為を行える者)であることが必要となります。ただし親権者と同時に申請する等、例外的に申請可能な場合もあります。


●素行要件(国籍法第五条第一項第三号)

素行が善良であることが求められます。具体的には、以下の点が総合的に判断されます。

  • 納税義務の履行

    所得税、住民税、年金、健康保険料などをきちんと納めているか。


  • 交通違反

    重大な交通違反や繰り返しの違反がないか。


  • 犯罪歴

    懲役や禁錮などの刑罰を受けていないか。罰金刑の場合も内容や回数によっては影響します。


  • その他

    社会への迷惑行為がないかなど、総合的に判断されます。


●生計要件(国籍法第五条第一項第四号)

申請者自身、または配偶者やその他の親族(同居し生計を共にしている者)の収入や資産によって、日本で安定した生活を送ることができる経済的な基盤があることが求められます。必ずしも高収入である必要はありませんが、公的な扶助(生活保護など)に頼らずに生活できることが目安となります。借金の状況なども審査の対象となります。


●重国籍防止要件(喪失要件)(国籍法第五条第一項第五号)

日本国籍の取得によって従来の国籍を喪失すること、または日本国籍の取得と同時に従来の国籍を離脱する意思があることが必要です。日本は原則として重国籍を認めていないため、この要件が課されています。ただし、本人の意思にかかわらず国籍離脱が不可能な国の国民については、例外的にこの要件が緩和される場合があります。


●憲法遵守要件(国籍法第五条第一項第六号)

これは日本の政治や日本そのものに対して、破壊的・反社会的思想を有していないか否かを確認されています。テロリストや暴力団関係者がわかりやすい例であり、こういった団体に所属している、若しくは所属していた経歴がある場合には許可が下りません。また上記のような団体に所属した経歴がなくとも、何らかの密接な関係にある場合には同様の取扱いとなります。その他、強い政治的主張を行う外国人団体に所属している場合にも、許可が下りない可能性がありますので、注意が必要です。



3.簡易帰化:要件が緩和される帰化申請

簡易帰化は、日本と特別な関係(血縁、地縁、婚姻関係など)を有する外国人について、普通帰化の要件が一部が緩和される制度です。国籍法第六条から第八条に規定されています。


簡易帰化の対象者

日本人の子、日本人の配偶者、元日本人、日本で生まれた者などが主な対象となります。これらの人々は、既に日本社会と深いつながりがある、あるいはあったと認められるため、一般の外国人に比べて帰化のハードルが低く設定されています。


簡易帰化の類型と緩和される要件

簡易帰化には複数の類型があり、それぞれ緩和される要件が異なります。


●日本国民であった者の子など(国籍法第六条)

以下のいずれかに該当する方は、住所要件(5年以上の居住)が緩和されます。それ以外の能力要件、素行要件、生計要件、重国籍防止要件、憲法遵守要件は満たす必要があります。

対象者

要件

日本国民だった者の子(外国籍を取得した元日本人の子供等)

3年以上の日本における住所または居所※を有すること

日本で生まれた者

3年以上の日本における住所または居所を有する、又は両親のいずれかが日本生まれであること

引き続き10年以上日本に居所を有する者

日本において10年以上居所を有していること

※「居所」とは、相当期間継続して居住しているものの、生活の本拠(住所)とまでは言えない場所を指します。


●日本人の配偶者など(国籍法第七条)

日本国民の配偶者である外国人で、以下のいずれかの条件を満たす場合は、住所要件(5年以上の居住)と能力要件(18歳以上)が緩和されます。

対象者

要件

日本国民の配偶者たる外国人

引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有すること

日本国民の配偶者たる外国人

婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有すること

実態のある婚姻関係が継続していることが重要です。偽装結婚や別居状態の場合は認められません。


●日本で生まれた者など(国籍法第八条)

以下のいずれかに該当する方は、住所要件(5年)、能力要件(18歳以上)、生計要件が緩和されます。日本との結びつきが特に強いと判断されるため、より多くの要件が免除されます。ただし、素行要件、重国籍防止要件、憲法遵守要件は満たす必要があります。

対象者

要件

日本国民の子

日本に住所を有すること


日本国民の養子

引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であったこと


日本の国籍を失った者(日本に帰化した後日本の国籍を失った者を除く)

日本に住所を有すること

日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者

出生時から引き続き3年以上日本に住所を有すること

4のケースは、無国籍状態の解消を目的とした規定です。


簡易帰化の申請手続きの概要

申請手続きの基本的な流れは普通帰化と同様で、住所地を管轄する法務局・地方法務局に申請します。ただし、提出書類において、日本との特別な関係を証明する書類等(戸籍謄本、婚姻証明書、出生証明書など)が追加で必要となります。



4.大帰化:特別な功労がある場合の帰化申請

大帰化は、普通帰化や簡易帰化の要件を一切問わず、日本に対して特別の功労があった外国人に対して、国会の承認を得て日本国籍を付与する制度です。国籍法第九条に規定されています。


大帰化の対象者

大帰化の対象となるのは、「日本に特別の功労のあった外国人」です。どのような行為が「特別の功労」に該当するかの具体的な基準は法律上明記されておらず、極めて例外的なケースに適用されるものと考えられています。


大帰化の要件と特徴

  • 要件

    国籍法第5条に定める帰化の諸要件(住所、能力、素行、生計、重国籍防止、憲法遵守)が一切問われず、免除となります。


  • 国会の承認

    法務大臣が許可するのではなく、国会の承認を経る必要があります。


  • 極めて稀な適用

    大帰化が適用された事例は、2025年時点では確認されていません。それほどまでにハードルが高く、特別な制度であると言えます。


大帰化の適用事例について

前述の通り、大帰化は極めて例外的な制度であり、これまでの適用事例は公表されていません。この制度は、国家に対して多大な貢献をした外国人に対し、通常の帰化手続きとは異なる特別な配慮をもって日本国籍を付与するための道を残しているものと理解できます。一般の就労資格を有する在留外国人の方が、この大帰化の対象となる可能性は、現実的にはほぼないと言えるでしょう。



5.3つの帰化申請の比較

これまで解説してきた普通帰化、簡易帰化、大帰化の主な違いを以下の表にまとめます。

比較項目

普通帰化

簡易帰化

大帰化

主な対象者

一般的な在留外国人

日本と特別な関係を有する外国人

日本に特別の功労があった外国人

根拠条文

国籍法第五条

国籍法第六条~第八条

国籍法第九条

許可機関

法務大臣

法務大臣

国会

住所要件

原則、引き続き5年以上日本に住所を有すること(内3年以上の就労実績を含む)

緩和、または免除

免除

能力要件

18歳以上で本国法でも能力者であること

類型により免除

免除

素行要件

善良であること(納税、法令遵守など)

善良であること(納税、法令遵守など)

免除

生計要件

自己または生計をーにする親族の資産・技能で生計を営めること

類型により緩和、または免除

免除

重国籍

防止要件

原則として従来の国籍を喪失すること

原則として従来の国籍を喪失すること

免除

憲法遵守要件

日本国憲法等を破壊することを企てたり主張したりしないこと

日本国憲法等を破壊することを企てたり主張したりしないこと

免除


6.まとめ

日本における3つの帰化申請、「普通帰化」「簡易帰化」「大帰化」について解説いたしました。就労資格で日本に在留されている方々にとって、帰化申請はご自身の将来を左右する大きな決断です。それぞれの要件や手続きを正しく理解し、ご自身の状況に照らし合わせて慎重に検討することが求められます。


帰化申請は複雑で長期間を要する手続きであり、多くの時間と労力が必要です。ご自身での手続きに不安を感じる方、より確実かつスムーズに手続きを進めたい方は、ぜひ一度、帰化申請の専門家である行政書士にご相談ください。


長後行政書士事務所では、相談者様一人ひとりの状況を丁寧に把握し、最適なアドバイスとサポートを提供することで、帰化許可という目標達成に向けて全力でお手伝いさせて頂いております。

初回相談無料となっておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。



参考:

e-Gov法令検索「国籍法」:

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