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【起業/外国人起業】起業までに必要となる手続きの概要とその流れ、スケジュール及び必要となる開業資金の目安について

  • 執筆者の写真: 行政書士 日下 雄一朗
    行政書士 日下 雄一朗
  • 22 時間前
  • 読了時間: 10分
飲食店

独自の事業構想をむねに、起業を決意することは、ご自身の人生を充実させるための大きな一歩であるといえます。しかし、事業構想がいかに素晴らしくとも、それを現実のものとするためには、法律に基づいた複雑かつ厳格な手続きをクリアしていかなければなりません。


特に外国籍の方が日本で起業される場合、2025年10月の入管法関連省令の改正により劇的にハードルが高まった「経営管理ビザ」の取得要件も考慮にいれて起業準備を進める必要があるため、入念な計画が必要になります。


本記事では、これらの要件を踏まえ、一般的な飲食店(株式会社)の開業をモデルケースとして、日本で起業するために必要となる手続きの全体像、スケジュール、そして大幅な見直しが必要となった資金計画について解説いたします。


目次

  1. 日本で起業するにあたり必要となる一般的な手続きの一覧

  2. 開業準備から経営開始までのスケジュールおよびその流れ

  3. 必要となる開業資金の目安とその内訳

  4. その他の手続きについて

  5. まとめ


1.日本で起業するにあたり必要となる一般的な手続きの一覧

起業までの道のりは、大きく分けて「法人設立」「事業環境の整備」「在留資格の取得(外国籍のみ)」の3つの段階に分類されます。これらの手続きは独立しているようでいて、相互に関連しています。


法人を設立するために必要な手続き

ビジネスの主体となる「会社(法人)」を作るための手続きです。

  • 事業圏調査・事業計画策定:

     どのエリアで、どのような客層をターゲットにするかを調査し、採算性のある事業計画を練ります。ビザ申請や創業融資を受ける場合において、この計画の実現可能性が厳しく審査されます。


  • 事務所(店舗)賃貸借契約: 

    法人の本店所在地となる物件を確保します。

    ※法人設立前は個人名義で仮契約し、設立後に法人名義へ書き換える等の対応が必要となる場合があります。


  • 定款(ていかん)の作成・認証: 

    会社の基本規則(商号、目的、本店所在地など)を定めた書類を作成し、公証役場で認証を受けます。


  • 資本金の払込: 

    発起人の個人口座へ資本金を振り込み、資金の存在を証明します。


  • 法人実印の作成: 

    登記申請や契約に使用する会社の実印を作成します。


  • 設立登記申請: 

    法務局へ申請を行い、受理されることで法人が成立します。


設立した法人が事業を行うために必要な手続き

会社が出来上がっただけでは、飲食店としての営業を行うことはできません。法人設立後の各種届出の他、お店の内装工事やスタッフの確保、営業に必要な許可の取得等の手続きが必要となります。

  • 法人設立届等の各種書類の提出:

     税務署、都道府県税事務所、市町村、年金事務所等へ各種書類の提出を行います。


  • 内装工事・備品発注: 

    保健所の基準を満たす内装工事を行い、厨房機器や什器備品を揃えます。


  • 従業員の確保・教育: 

    スタッフの募集、採用、雇用契約の締結、および研修を行います。なお経営管理ビザを取得する場合、「常勤職員1名以上」の雇用が必須となります。


  • 食品衛生責任者の選任: 

    店舗ごとに必ず1名以上の有資格者を配置する必要があります。


  • 飲食店営業許可申請: 

    管轄の保健所へ申請し、実地検査を経て許可証を取得します。


【外国人起業家のみ】経営者が日本に入国し経営を行うために必要な手続き

外国籍の方が経営者として日本に滞在するための、入管法上の手続きです。2025年10月16日以降、手続きの難易度が大幅に上昇しています。

  • 事業計画書の作成(専門家確認): 

    入管審査において、事業の安定性・継続性を証明するための詳細な計画書が必要です。法改正に伴い中小企業診断士等の公的資格を持つ専門家による事業計画の確認が必須化されました。


  • 在留資格認定証明書交付申請(経営・管理): 

    出入国在留管理庁へ申請を行います。審査期間は長く、数ヶ月を要します。


  • 査証(VISA)申請・発給: 

    母国の日本大使館・領事館にてビザの発給を受けます。


  • 来日・在留カードの受け取り: 

    日本に入国し、在留カードを受け取ります。


法人を設立せずに個人事業主として開業を行う場合

本モデルケースでは株式会社の設立を前提としていますが、飲食店の経営自体は個人事業主として行うことも可能です。この場合、株式会社設立に必要となる手続き全てを省略できるので、開業手続きとしては簡易に行うことが可能となります。


なお、法人経営と個人経営の選択は社会的信用や見込まれる利益額、複数店舗の経営を視野に入れているかといった諸要件をもとに判断することが一般的ではありますが、経営管理ビザの申請を前提とされる場合、当事務所では法人設立をされることをおすすめしております(投資金額の証明が資本金として明確になり、審査上有利となるため)。



2.開業準備から経営開始までのスケジュールおよびその流れ

開業準備に取りかかってから経営を開始するまでには約6ヶ月程度の期間を、ビザ申請も考慮に入れるのであれば約10ヶ月程度の期間を見込む必要があります(居抜き物件を活用するといった例外ケースを除く)。

ここでは、4月に準備を開始し、翌年2月(ビザ申請が不要の場合は9月)に来日・経営開始となるモデルケースをご紹介します。


全体スケジュールの概要(モデルケース)

時期

フェーズ

主な実施事項

4月上旬

準備開始

事業圏調査、事業用地(物件)の選定、資金調達計画

5月下旬

法人設立準備

資本金の払込、定款認証、事務所(店舗)賃貸契約

6月上旬

登記申請

法人設立登記申請(会社設立)

6月中旬

店舗準備

内装工事着工、備品発注、スタッフ募集、設立後届出各種の提出

7月下旬

人員確保

スタッフ雇用契約締結、食品衛生責任者講習受講

8月上旬

営業許可申請

内装工事完了、飲食店営業許可申請

9月上旬

営業許可取得

(ビザ申請なしの場合はこのタイミングで経営開始)

飲食店営業許可証の受領

9月中旬

ビザ申請

在留資格認定証明書交付申請(経営・管理)

1月中旬

認定証明書交付

審査完了、認定証明書(COE)の発行

1月下旬

現地手続き

本国の日本公館にてVISA申請

2月中旬

来日・経営開始

VISA発給、来日、経営開始

※こちらはあくまで一例であり、内装を含む店舗準備を設立手続きに先んじて行う等、手順が前後する可能性もございます。


開業準備~法人設立まで(目安:3ヶ月~)

最初の3ヶ月は、事業の土台作りです。

店舗の確保、事業計画の策定といった個人開業の場合でも必要となる手続きの他、定款認証を含む登記に必要な書類の収集・作成、資本金の振込といった株式会社設立に必要となる手続きが行われます。

なお経営管理ビザの申請も行われる場合、資本金として3000万円が必要となるほか、物件選定においても、事業規模に見合っている物件であるか等を合わせて確認する必要があります。


内装工事~許認可取得まで(目安:3ヶ月~)

法人が設立されたら、内装工事とスタッフ募集に並行して設立後届出の提出を行い、その後に営業許可申請を行います。

飲食店を経営する場合、最低1名の食品衛生責任者を設置する必要がありますので、雇用するスタッフに有資格者がいなければ、営業許可申請の前に講習の受講も必要です。

なお経営管理ビザを申請する場合、営業許可申請後にビザ申請を行うことをおすすめします。

入管の審査では、「事業が適法に行われている(または行われようとしている)こと」が厳しくチェックされるため、営業許可が下りていない段階でのビザ申請は、事業の実現性が立証できないとして不許可になるリスクが高まるためです。


【外国人起業家のみ】ビザ申請~来日・経営開始まで(目安:4ヶ月~)

全ての準備が整った段階で、出入国在留管理庁へ「在留資格認定証明書(COE)」の交付申請を行います。

審査では資本金額や許認可の取得状況といった事業そのものの確認の他、経営者の学歴・経歴についても確認がなされます。

なお新制度では、原則として「専門家(中小企業診断士等)の確認を受けた事業計画書」の提出が必要となりました。また、申請人(経営者)または常勤職員にN2相当以上の日本語能力が求められるようになったため、これらを証明する書類(JLPT合格証書等)の準備も必要です。



3.必要となる開業資金の目安とその内訳

開業資金は事業規模や賃借する物件の立地等により大きく増減するものの、目安としてはトータル2,000万円程度(運転資金を除く)、経営管理ビザの申請も行われる場合は資本金要件の兼ね合いから最低でも3,000万円以上の資金が必要となります。大まかな内訳は下記の通りとなります。


法定費用と設備・運転資金

項目

金額の目安

備考

株式会社設立法定費用

約20万円~(経営管理ビザを申請する場合は26万円~)

登録免許税:「資本金の0.7%(金額が15万円に満たない場合は15万円)」

定款認証手数料:3~5万円

(紙定款の場合は印紙代:40,000円)

飲食店営業許可申請手数料

約2万円

保健所へ納付(自治体により異なる)

物件取得費・内装費

約500万~1,500万円

資本金の中から拠出可。

(運転資金)

約1,000万円~

資本金の中から拠出可。人件費、水道光熱費、売上原価(仕入)等。なおビザ申請をする場合は常勤職員の雇用が必須となります。


専門家(士業)へ依頼した場合の報酬相場

依頼業務

報酬相場の目安

担当専門家

会社設立手続

15万円 ~ 50万円

司法書士・行政書士等。サービス内容により大きく金額が異なります。

飲食店営業許可申請

5万円 ~ 15万円

行政書士

経営・管理ビザ申請

30万円 ~ 50万円

行政書士


事業計画策定・評価

10万円 ~ 30万円

中小企業診断士・行政書士


税務顧問(月額)

3万円 ~ 5万円

税理士

すべての手続きを依頼する場合、専門家報酬として概ね60万円~150万円程度が相場となります。



4.その他の手続きについて

上記が一般的な手続きとなりますが、各々の意向や状況に応じて、下記のような手続きが追加で発生する可能性があります。

  • 法人銀行口座の開設: 

    法人設立直後は個人口座を用いて経営することも可能ですが、事業を行ううえで、取引先から法人口座の取得を求められることも。初年度決算が行われていない状態での口座開設では事業計画を含む事業実態の確認等がなされます。


  • 消防署への各種書類提出:

    防火管理者選任届や消防計画等、店舗の収容人数や設備に応じて提出が必要となる書類が発生する可能性があります。内装工事を行う際に必要な書類については業者が手配してくれる場合もありますが、基本的には自身で対応するものと認識したほうがいいでしょう。


  • 深夜酒類提供飲食店営業開始届:

    居酒屋やバルといった、 深夜0時以降にアルコールを提供するお店の場合に必要となる届出です。飲食店営業許可同様に建物の構造上の要件も備えなければならないため、夜間営業を検討されている場合は、内装工事の段階から意識する必要があります。



5.まとめ

以上が飲食店(株式会社)をモデルケースとした、起業に必要な手続きの概要となります。資金調達を含む事業計画の策定、お店の準備、法人設立及び許認可の取得といった手続きはそれぞれ関連性があり、万全の状態で経営を開始するには手続き全体を俯瞰して行う必要があるといえます。


特に在留資格の取得を前提とする外国籍の方の場合、資本金3,000万円の準備、常勤職員の雇用、そして日本語能力等、複数の高いハードルを越えるための入念な準備が必要です。


長後行政書士事務所では、相談者様一人ひとりの状況を丁寧に把握し、最適なアドバイスとサポートを提供することで目標達成に向けて全力でお手伝いさせて頂いております。初回相談無料となっておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。


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