【帰化申請】申請手続き重点解説:申請から許可後の手続きまでの全体像
- 行政書士 日下 雄一朗
- 2 days ago
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日本で生活し、就労されている外国人の方が、将来にわたり日本で安定した生活を築くための一つの選択肢として「帰化申請」があります。帰化とは、日本の国籍を取得し、日本人として生活していくための法的な手続きを指します。
帰化申請は、申請者ご自身の状況や家族構成、これまでの在留状況などにより、準備すべき書類や手続きの進め方が大きく異なる非常に複雑な手続きです。また、申請から許可を得るまでには長期間を要するという特徴もあります。
本記事では、就労資格をお持ちの外国人の皆様が帰化申請を検討される際に、その手続きの全体像を把握し、各段階で具体的にどのような準備や対応が必要となるのかを、可能な限り詳細かつ網羅的に解説いたします。
目次
1.帰化申請手続きの全体像と所要期間の目安
帰化申請の手続きは、大きく分けて以下の5つのStepで進行します。
段階 | 主な内容 |
Step1: 事前相談・ 専門家へのご依頼 | 住所地を管轄する法務局・地方法務局(以下、総称して「法務局」といいます。)にて、帰化申請に関する相談を行い、申請の可否や必要書類等について確認します。専門家へご依頼される場合は、このStepの前後が一般的なタイミングです。 |
Step2: 書類収集・ 作成 | 事前相談での指示に基づき、本国や日本国内から必要な書類を収集し、申請書類を作成します。 |
Step3: 帰化申請 (書類提出) | 収集・作成した書類一式を法務局に提出します。書類が受理されると、正式な審査が開始されます。 |
Step4: 審査 | 法務局による書類審査、面接、場合によっては実態調査などが行われます。 |
Step5: 結果通知・ 許可後手続 | 審査結果(許可または不許可)が通知されます。許可の場合は、許可後手続を行います。 |
これらの各段階を経て帰化が許可されるまでの所要期間は、申請者の状況や法務局の混雑具合によって大きく変動しますが、一般的には書類提出(受理)からおおむね8ヶ月~1年半程度が目安です。事前相談から書類収集・作成期間を含めると、さらに長い期間を要することになります。
2.Step1:事前相談・専門家へのご依頼
帰化申請手続きの第一歩は、法務局での事前相談です。この事前相談は非常に重要であり、ここでの準備と対応がその後の手続きを大きく左右すると言っても過言ではありません。
事前相談の目的
事前相談の主な目的は以下の通りです。
帰化の意思確認と基本的な条件の確認:
申請者本人の意思確認、また、国籍法に定められた帰化の基本的な条件(居住要件、能力要件、素行要件、生計要件、重国籍防止要件、憲法遵守要件など)を満たしているか(または満たす見込みがあるか)を法務局の担当官が確認します。
申請者に応じた必要書類のリストアップ:
申請者の国籍、家族構成、職業、在留歴など、個別の状況に応じて、具体的にどのような書類を収集・作成する必要があるのか、詳細な指示を受けます。
手続きの流れの説明:
帰化申請全体の流れや、今後の注意点などについて説明を受けます。
上記のほかに、場合によってはこのタイミングで日本語テストが行われる可能性があります。また管轄により異なるものの、原則として、事前相談を経ずに申請書類を提出することはできません。まずは事前相談を受け、担当官の指示に従って準備を進める必要があります。
事前相談の予約方法
法務局での帰化に関する相談は、原則として予約制となっています。予約なしで訪問しても相談を受けられない場合がほとんどですので、事前に管轄の法務局に電話等で連絡を取り、相談日時を予約するようにしましょう。なお管轄の法務局は、申請者の現在の住所地によって定められています。法務省のウェブサイト等でご自身の住所地を管轄する法務局を確認するなどして、かけ間違いのないよう注意が必要です。
事前相談当日の準備
予約した日時に法務局へ出向きます。相談時間は1〜2時間程度を見込んでおくと良いでしょう。
【事前相談当日に持参すると良い主なもの】
準備物 | 備考 |
在留カード | |
パスポート(旅券) | |
運転免許証(お持ちの場合) | |
健康保険証(お持ちの場合) | |
帰化相談質問票 | 帰化相談を受け付けるにあたり、法務局が用意した質問票のこと(Web上にてダウンロードが可能)。管轄により存在しない場合もあります。 |
帰化許可申請書類一式(可能な場合) | 現段階で作成可能な書類一式を持参すると事前相談がスムーズに進みます。持参する際はご自身の確認用と担当官の確認用で2部用意するのが望ましいといえます。 |
メモ帳、筆記用具 | 指示された内容を正確に記録するため。 |
上記はあくまで一般的な例であり、場合によっては住民票や源泉徴収票、戸籍謄本等の持参を指示される場合もあります。予約時に担当官から指示があった場合は、それに従ってください。また、日本語でのコミュニケーションに不安がある場合は、信頼できる通訳人や行政書士等の専門家を同行させることも検討できますが、その可否や条件については事前に法務局に確認が必要です。
相談当日は、担当官からの質問に正直かつ正確に回答することが重要です。虚偽の申告は、後の審査に重大な悪影響を及ぼす可能性がありますので、偽りなく回答するよう心がけましょう。
事前相談で確認される主な事項
事前相談では、申請者が帰化の要件を満たしているかを確認するため、担当官から以下のような事項について詳細に質問されます。
申請者本人に関する事項:
氏名、生年月日、出生地、国籍
日本への入国年月日、これまでの在留資格と在留期間
学歴、職歴(日本国内外のもの)
現在の職業、勤務先、役職、勤続年数、収入状況
日本語能力(読み書き、会話のレベル)
結婚歴、離婚歴、子供の有無など家族関係
過去の犯罪歴、交通違反歴の有無
納税状況
家族に関する事項(同居・別居、国内外問わず):
両親、配偶者、子供、兄弟姉妹などの氏名、生年月日、国籍、職業、居住地
家族の日本との関わり(日本在住歴、日本国籍の有無など)
帰化の動機:
なぜ日本国籍を取得したいのか、具体的な理由
将来日本でどのように生活していきたいか
その他:
資産状況(不動産、預貯金など)
借金の有無とその内容
日本の法令遵守に関する意識
これらの質問に対し、正確に回答できるように、事前にご自身の情報を整理しておくとスムーズです。
事前相談後に指示されること
事前相談の結果、帰化の基本的な条件を満たしていると判断されれば、担当官から今後の手続きの流れの説明と帰化申請を行うために必要となる書類のリストが手渡されます。またこのタイミングで次回の相談予約(あるいは申請予約)を行うのが一般的です。
ご自身で帰化申請を行う場合、事前相談は帰化申請における指針のようなものです。担当官からの指示を正確に理解し、着実に準備を進めていくことが肝要だといえます。
専門家へご依頼される場合
行政書士等の専門家に帰化申請を依頼される場合、事前相談の前、あるいは後に依頼するのが一般的です。
事前相談前に依頼する場合、事前相談に専門家である行政書士が同伴してくれる場合があるほか、管轄によっては事前相談なしでの申請も視野に入れることが可能となり、申請までの期間の短縮が期待できます。
これに対して、事前相談後の依頼の場合、事前相談時にご自身での申請が可能か否かの判断をしてから依頼することが可能になるため、場合によっては金銭面での負担減少につながります。
どちらも一長一短があるため、ご自身の状況に合わせて専門家の活用を視野にいれるのが理想的です。
3.Step2:帰化申請書類の収集と作成
Step2では、事前相談で指示された書類を収集し、申請書の作成を行います。このStepは、帰化申請手続きの中で最も時間と労力を要する部分の一つであり、正確性と網羅性が求められます。
収集すべき書類の区分と具体例
帰化申請には、非常に多くの書類を準備する必要があります。以下に主なものを挙げますが、申請者の国籍、身分関係、職業、生活状況などによって、これら以外にも追加の書類が必要となる場合や、逆に不要となる書類もあります。
ご自身で作成する書類
書類名 | 概要 |
帰化許可申請書 | 申請者の基本情報、申請の意思などを記載する中心的な書類(写真貼付) |
親族の概要を記載した書面 | 父母、兄弟姉妹、配偶者、子などの情報を記載 |
履歴書(その1、その2) | 学歴、職歴、住居歴、出入国歴などを詳細に記載 |
生計の概要を記載した書面 | 収入、支出、資産、負債などの状況を記載 |
事業の概要を記載した書面 | 個人事業主や会社経営者の場合に事業内容や経営状況を記載 |
帰化の動機書 | なぜ日本国籍を取得したいのか、その理由や日本での将来展望などを具体的に記載 |
宣誓書 | 日本国憲法を遵守することなどを宣誓する書類(法務局で署名) |
居宅付近の略図 | 自宅及び勤務先(事業所)の最寄り駅からの地図を作成 |
勤務先付近の略図 | |
事業所付近の略図 |
日本国内で取得する書類
書類名 | 取得場所・備考 |
住民票の写し(世帯全員分) | 市区町村役場 |
住民票の除票(過去の住所地のもの) | 過去に住んでいた市区町村役場(必要な場合) |
在留カードのコピー(表裏) | |
特別永住者証明書のコピー(表裏) | (特別永住者の場合) |
出生届記載事項証明書 | 届出をした市区町村役場 |
婚姻届記載事項証明書 | 届出をした市区町村役場 |
離婚届記載事項証明書 | 届出をした市区町村役場 |
死亡届記載事項証明書 | 届出をした市区町村役場 |
養子縁組届の記載事項証明書 | 届出をした市区町村役場 |
認知届の記載事項証明書 | 届出をした市区町村役場 |
親権者変更届の記載事項証明書 | 届出をした市区町村役場 |
戸籍謄本(全部事項証明書) | 本籍地の市区町村役場(父母、配偶者、子が日本人の場合など) |
除籍謄本、改製原戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場(必要な場合) |
課税証明書 | 1月1日現在の住所地の市区町村役場(所得を証明) |
納税証明書 | 税務署(国税)、都道府県税事務所(都道府県民税)、市区町村役場(市区町村民税) |
確定申告書控のコピー | (自営業者や会社役員などの場合) |
源泉徴収票 | 勤務先 |
運転記録証明書(過去5年分) | 自動車安全運転センター |
運転免許証のコピー(表裏) | |
技能・資格を証する書面(コピー) | (保有している場合、医師免許、教員免許など) |
不動産登記事項証明書 | 法務局(不動産を所有している場合) |
預貯金残高証明書、預金通帳のコピー | 取引金融機関 |
その他 | 賃貸借契約書、国外居住親族への送金関係書類、年金定期便、健康保険証の写し等 |
母国から取り寄せる書類(または在日公館で取得する書類)
これらの書類は、国によって名称や取得方法が異なります。また、日本語の翻訳文を添付する必要があります。
書類名 | 概要・備考 |
国籍証明書 | 現在の国籍を証明する書類 |
出生証明書 | 出生に関する事項(生年月日、出生地、父母の氏名など)を証明する書類 |
婚姻証明書 | 婚姻に関する事項を証明する書類(独身の場合は独身証明書など) |
離婚証明書 | (離婚歴がある場合)離婚に関する事項を証明する書類 |
死亡証明書 | (親族に死亡者がいる場合)死亡に関する事項を証明する書類 |
親族関係証明書 | 父母、兄弟姉妹、子などとの関係を証明する書類 |
パスポートの写し | |
その他 | 母国の成績証明書、卒業証明書、軍隊服務に関する証明書等 |
書類収集における注意点
有効期限
証明書類の多くには有効期限があります。例えば、住民票の写しや戸籍謄本、各種証明書などは、原則として発行日から3か月以内のものを求められます。ただし、書類の種類や法務局の指示によって期限が異なるため、必ず事前の確認が必要です。有効期限を過ぎた書類は再取得が必要になるため、計画的に収集を進めましょう。
翻訳の必要性と翻訳者
外国語で作成された書類(本国の出生証明書、婚姻証明書など)は、日本語の翻訳文を添付する必要があります。翻訳は、原則として誰がしても構いませんが、翻訳者の氏名、住所、翻訳年月日を明記する必要があります。
また翻訳内容の正確性は非常に重要です。誤訳があると審査に影響が出る可能性があるため、日本語に不安が残る方については、専門の翻訳業者に依頼するのが無難であるといえます。
アポスティーユ認証や領事認証
本国で発行された公文書について、その書類が真正なものであることを証明するために、ハーグ条約(外国公文書の認証を不要とする条約)の締約国であればアポスティーユ認証、非締約国であれば発行国の外務省による認証及び日本の領事館による領事認証を求められる場合があります。 これらの認証が必要かどうかは国や書類によって異なるため、事前相談時に法務局の担当官に確認する必要があります。
申請書類作成のポイントと注意点
正確性: 全ての記載事項は、事実に基づいて正確に記入する必要があります。誤字脱字がないように丁寧に作成し、提出前には見直しも行うほうがいいでしょう。
網羅性: 求められている情報を全て記載し、原則として空欄がないようにする必要があります。
一貫性: 複数の書類間で記載内容に矛盾が生じないように注意しましょう。例えば、履歴書に記載した職歴と、生計の概要に記載した収入源が整合しているかなど、関連する書類間で整合性を保つことが重要です。
具体性: 特に帰化の動機や生計の概要などは、抽象的な表現を避け、できるだけ具体的に記載します。
日本語能力: 申請書類は原則として日本語で作成します。日本語の文章能力も審査の対象となるため、丁寧な字で、分かりやすい文章を心がけましょう。代筆が認められる場合もありますが、その場合でも本人の意思が反映されていることが前提となります。
書類の収集と作成は、根気と注意深さが求められる作業です。不明な点や判断に迷うことがあれば、自己判断せずに法務局の担当官に確認するか、専門家に相談することをお勧めします。
4.Step3:法務局への帰化申請書類の提出
全ての必要書類が揃い、申請書の作成が完了したら、いよいよ法務局へ書類を提出する段階です。
申請書類提出のアポイントメント
帰化申請書類の提出も、事前相談と同様に原則として予約制です。書類が全て揃った段階で、事前に法務局の担当官に連絡を取り、提出日時を予約します。ちなみに管轄によっては予約なしで訪問した場合でも受け付けてもらえる可能性もありますが、その場合でも長時間待たされるのがざらですので、やはり予約をするのが無難です。
提出時の流れと確認事項
予約した日時に、収集・作成した書類一式を持参し、法務局へ出向きます。申請は原則として申請者本人が行う必要があります。
提出時には、法務局の担当官が持参した書類一式をその場で確認します。
書類のチェック:
書類に不足がないか、記載漏れや明白な誤りがないか、必要な押印がされているかなどが確認されます。
質疑応答:
書類の内容について、担当官からいくつか質問されることがあります。これは、書類の内容が申請者本人の真意に基づいているか、内容を理解しているかなどを確認するためです。
宣誓書の署名:
宣誓書への署名は、この提出時に担当官の面前で行うよう指示されます。
日本語能力の確認:
担当官とのやり取りを通じて、日本語の理解力や会話能力がある程度確認されます。
担当官による書類チェックの結果、軽微な不備であればその場で訂正を求められたり、後日追加で提出するよう指示されます。これに対して、重大な不備や不足がある場合は、書類一式が受理されず、再提出となります。
受付票の受領と控えの保管
提出した書類に問題がなく、法務局が正式に申請を受け付けると、「受付表」が交付されます。この受理票には、申請年月日や受付番号などが記載されており、審査状況の問い合わせや、後日何らかの連絡がある際に必要となる重要な書類ですので、大切に保管してください。
また、提出した申請書類一式は、原則として返却されません。後々の確認や、万が一の再申請の可能性に備え、提出前に全ての書類のコピーを取り、ご自身で保管しておく必要があります。
書類が受理された日から、正式な審査が開始されます。
5.Step4:法務局による審査
帰化申請書類が受理されると、法務局による本格的な審査が開始されます。この審査期間中には、書類審査に加え、面接や実態調査などが行われることがあります。
審査期間の目安と進行状況の確認
前述の通り、審査期間は一般的に書類受理からおおむね8ヶ月から1年半程度が目安といわれています。しかし申請者の状況、法務局の管轄や混雑状況、審査の過程で追加の調査が必要になった場合などにより、これより短くなることも、長くなることも当然に想定されます。
よって審査の進行状況について、申請者側から頻繁に問い合わせることは推奨されません。ただし、長期間にわたり何の連絡もない場合や、引っ越しなどで連絡先に変更があった場合など、やむを得ない事情がある際には、受理票に記載された受付番号を伝えて、管轄の法務局に状況を照会することは可能です。
面接の実施
審査の一環として、法務局の担当官による面接が実施されます。面接は状況に応じて、申請者本人だけでなく、配偶者や同居の親族にも実施される可能性があります。
面接の内容と時期
面接の主な内容は以下の通りです。
申請書類に記載された内容の確認:
提出された書類の内容が事実に即しているか、申請者本人が内容を理解しているかを確認します。基本的に申請書類に記載したほぼ全ての内容について確認がなされるとお考え下さい。
帰化の意思の最終確認:
日本国籍を取得したいという意思が強固であるか、その動機に不自然な点がないかなどを確認します。
日本語能力の確認:
日常会話や社会生活を営む上で支障のない程度の日本語能力(日本語能力試験N3程度)を有しているかを確認します。筆記テストが行われることもあります。
日本社会への適応性:
日本の法令を遵守する意識や、日本社会の一員としての自覚があるかなどを確認します。
面接の時期は、申請書類の受理から数か月から半年程度経過した後に行われることが多いですが、これもケースバイケースです。面接の日時は、事前に法務局から連絡があります。
面接時の注意点(服装、態度、日本語能力)
服装:
特に指定はありませんが、清潔感のある、面接の場にふさわしい服装を心がけましょう。
態度:
担当官に対して敬意を払い、明確な受け答えを心がけます。質問が聞き取れなかった場合は、正直に聞き返しましょう。曖昧な返事や虚偽の回答は絶対に避けてください。
日本語能力:
完璧な日本語である必要はありませんが、自分の意思を伝え、相手の言うことを理解できる程度の日本語能力は必要です。帰化申請に必要とされる日本語能力は、一般に小学校中学年程度(日本語能力試験N3程度)といわれており、筆記テストにおいても、このレベルのものが出題されます。
実態調査(家庭訪問・職場訪問等)の可能性
申請内容の事実確認のため、法務局の担当官が申請者の自宅や職場を訪問する実態調査が行われることがあります。
家庭訪問では、居住状況、家財道具、家族との会話の様子などが確認され、職場訪問では、実際に勤務しているか、職場の同僚との関係や勤務態度などが確認されます。
これらの調査が行われる場合は、事前に連絡があるのが一般的ですが、抜き打ちで行われる可能性もゼロではありません。普段から整理整頓を心がけ、誠実な生活を送ることが重要です。
追加書類の提出指示とその対応
審査の過程で、提出済みの書類だけでは情報が不足していると判断された場合や、申請後に状況が変化した場合(例:転職、引っ越し、結婚、出産など)には、法務局から追加の書類提出を求められることがあります。 期限内に提出できない場合、それだけで不許可となる可能性がありますので、指示があった場合は速やかに対応し、指定された期限までに書類を提出する必要があります。期限内の提出が難しい場合には、必ず担当官にその旨を伝え、指示を仰ぎましょう。
申請内容に変更が生じた場合の届出義務
帰化申請中に、申請書類に記載した内容に重要な変更が生じた場合は、速やかに法務局の担当官に届け出る義務があります。主な変更事項としては以下のようなものが挙げられます。
住所、連絡先の変更:
引っ越しをした場合など。
職業、勤務先の変更:
転職、退職、開業など。
収入の大きな変動:
昇給、減給、失業など。
身分関係の変更:
結婚、離婚、出生、死亡(本人または親族)など。
氏名の変更:
本国で氏名を変更した場合など。
海外への長期渡航:
長期間(目安として3か月以上)日本を離れる場合や、頻繁に出入国する場合。
法令違反:
交通違反(特に重大なもの)、その他の犯罪行為など。
これらの変更が生じたにもかかわらず届け出を怠ると、審査に悪影響が出たり、場合によっては虚偽申請とみなされる可能性があります。変更があった場合は、自己判断せずに速やかに法務局に連絡し、指示を仰ぎましょう。
6.Step5:審査結果の通知と許可後の手続き
長期間にわたる審査が終了すると、法務局から審査結果が通知されます。
結果通知
審査結果は、許可・不許可の別に関わらず、法務局から申請者本人宛に電話または郵送で通知されます。
許可後手続の流れ
帰化が許可された場合、いくつかの重要な手続きが待っています。
官報への掲載
法務大臣による帰化の許可決定は、「官報」という国の機関紙に告示されます(官報に記載された日が、法的に日本国籍を取得した日となります)。なお官報はインターネットでも閲覧可能です。
身分証明書の交付
官報掲載後、法務局から「帰化者の身分証明書」が交付されます。これは、帰化が許可されたことを証明する非常に重要な書類で、この後の諸手続きに必要となります。通常、法務局に出頭して直接受け取ることになります。
帰化後の諸手続き(戸籍、氏名変更、運転免許証、不動産登記など)
日本国籍を取得すると、様々な手続きが必要になります。主なものは以下の通りです。
手続きの種類 | 主な内容と窓口 | 期限の目安 |
帰化届の提出 | 帰化者の身分証明書を添付して、市区町村役場に「帰化届」を提出し、日本の戸籍を新たに作ります。これにより、戸籍謄本が作成されます。 | 1ヶ月以内 |
在留カード・特別永住者証明書の返納 | 出入国在留管理庁(地方出入国在留管理局)に、これまで所持していた在留カードまたは特別永住者証明書を返納します。 | 14日以内 |
マイナンバーカードの氏名変更等 | 市区町村役場にて、マイナンバーカード(または通知カード)の氏名変更や、新しい住民票に基づく情報への更新手続きを行います。 | 14日以内 |
運転免許証の氏名・本籍変更 | 警察署または運転免許センターにて、運転免許証の記載事項(氏名、本籍)を変更します。新しい住民票や戸籍謄本が必要となる場合があります。 | 速やかに |
銀行口座・クレジットカード等の氏名変更 | 各金融機関やカード会社にて、氏名変更の手続きを行います。 | 個別の規程に従う |
不動産登記の氏名・住所変更 | 不動産を所有している場合、法務局にて登記名義人の氏名・住所変更登記を行います。 | 2年以内 |
パスポート(日本国旅券)の申請 | 必要に応じて、日本のパスポートを申請・取得します。申請は各都道府県のパスポート申請窓口で行います。 | 新しいパスポートを申請する際 |
各種保険・年金等の手続き | 健康保険、年金、雇用保険などについて、氏名変更や資格変更の手続きが必要となる場合があります。勤務先や市区町村役場、年金事務所などに確認しましょう。 | 個別の規程に従う |
その他 | 携帯電話、電気・ガス・水道、勤務先への届出など、氏名や国籍の変更に伴う手続きが多数あります。 | 個別の規程に従う |
これらの手続きは多岐にわたり、それぞれ期限が定められているものもありますので、計画的に進める必要があります。不明な点は各窓口に確認しましょう。
帰化不許可の場合
残念ながら帰化申請が不許可となる場合もあります。
不許可理由の確認
不許可の場合、法務局の担当官からその旨の通知があります。希望すれば、不許可となった理由について、法務局で直接説明を受けることができます。この説明は、今後の対応を考える上で非常に重要ですので、可能な限り受けるようにしましょう。 どのような点が帰化の条件を満たしていないと判断されたのか、具体的に確認することが大切です。ただし、審査そのものの内容や個々の判断基準について、詳細な開示が受けられない場合もあります。
再申請の検討
帰化申請が一度不許可になったとしても、再申請ができないわけではありません。不許可理由を解消し、状況が改善されれば、再度帰化申請に挑戦することが可能です。
例えば、不許可理由が「生計要件を満たしていない」ということであれば、安定した収入を確保し、その状態を一定期間継続した後に再申請を検討できます。「素行要件に問題がある(交通違反が多いなど)」ということであれば、法令遵守の意識を高め、違反のない期間を長く設けることで改善が期待できます。「日本語能力不足」であれば、日本語学習に励み、能力を向上させる必要があります。
不許可理由を正確に把握し、その原因となった問題を解決するための具体的な方策を立て、十分な準備期間をおいてから再申請に臨むことが重要です。再申請の際には、前回の不許可理由がどのように改善されたかを具体的に説明できるようにしておきましょう。 不許可理由によっては、すぐに改善が難しい場合や、長期間を要する場合もありますので、そのような場合は、焦らず期間をおいて再申請を行うのが肝要です。
9.まとめ
本記事では、就労資格を有する外国人の皆様を対象に、帰化申請の詳細な手続きの流れについて解説してまいりました。
帰化申請は、事前相談から始まり、膨大な量の書類収集・作成、法務局への提出、そして長期間にわたる審査と面接を経て、ようやく許可に至るという、非常に労力と時間を要する手続きです。各段階で注意すべき点も多く、一つ一つのステップを正確かつ着実に進めていくことが求められます。
特に、就労されている皆様にとっては、日々の業務と並行してこれらの準備を進めることは、大きな負担となり得ます。また、ご自身の状況に応じた適切な書類の判断や、正確な申請書類の作成は、専門的な知識がないと難しい側面もございます。
もし、帰化申請の手続きにご不安を感じたり、ご自身での準備に困難を覚えたりした場合には、行政書士などの専門家にご相談いただくことも有効な選択肢の一つです。
長後行政書士事務所では、相談者様一人ひとりの状況を丁寧に把握し、最適なアドバイスとサポートを提供することで、帰化許可という目標達成に向けて全力でお手伝いさせて頂いております。
初回相談無料となっておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
参考:
法務省 「帰化許可申請」:
法務省「国籍Q&A」: